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90周年を祝う関係者ら
90周年を祝う関係者ら

第2アリアンサ=90周年を700人超で祝う=鳥取村で鳥居と史料館落成=母県からの支援に感謝

 サンパウロ州ミランドポリス郡の第2アリアンサ移住地(鳥取村=矢尾板暉埜会長)で23日、『入植90周年記念式典』が行われた。母県から8人の慶祝団ほか、郷友会や県人会から80人を超える会員がサンパウロ市から集まり、延べ700人超となる来場者で盛大に敢行された。

鳥居の完成を祝したテープカット

鳥居の完成を祝したテープカット


 一分間の黙祷を捧げた後、第2アリアンサ文化体育協会(ACENSA)の矢尾板暉埜会長は「理想郷建設のため原始林を開拓し、村を築いた先人に感謝でいっぱい」と挨拶した。同村で深刻な高齢化が進行する一方、「村を離れた子供たちは立派に成長し、村民との繋がりを強く感じている。後継者のためも村を守り続けてゆきたい」と力強く宣言した。
 午前10時からの式典には中前隆博在聖総領事、鳥取県から藤縄喜和県議会副議長、野川聡県庁統轄監ほか、フランシスコ・アントニオ・パサレリ・モルネソ同郡長らが来賓として招かれ、祝福の言葉が相次いだ。
 10年前にも当地を訪問した藤縄副議長は、「今後も地域・民間レベルでの交流を強化し、100年、200年と交流を続けていきたい」と積極姿勢を示した。本橋幹久鳥取県人会会長は、94年から行われてきた同村への日語教員派遣事業に対して謝意を表し、「母県からの派遣事業は移民がルーツを知る上でも重要」と評価し、事業の継続を要請した。
 慶祝団からは同協会にお祝い金50万円が贈呈されたほか、机や椅子、白板、プロジェクタースクリーンが日語学校へ寄贈され、関係者から謝意が述べられた。
 午後には、会館前に新設された移住史料館と鳥居の完成を祝い、テープカットが行われた。アリアンサ出身者らによる支援を受け、旧組合従業員住居を改築し、3年がかりで完成。史料館の佐藤勲館長(76、二世)は、「鳥取出身者は今では三世帯ほど。このままでは母県との繋がりが希薄化する」との危機感から史料館設置に至った。
 初代理事として移住してきた大岩村(現岩美町)村長だった故・橋浦昌雄氏の息子・行雄さんも「村を維持してゆくだけでも精一杯なのが現状。同村の子弟が奮発して頑張らないと」と危機感を募らせた。
 例年は400人程度というなか、今年は700人超で会館外の席も来場者で溢れかえった。野川統轄監は「ここまで結集力があるとは。日本人が忘れたものがここにはあるように感じた」と率直に語り、「後継者問題など課題は色々あるが、仲間意識・連帯の強さを示したことに価値がある。これが原点回帰となって移住地の精神を受け継ぐきっかけに」として、同村事業支援の甲斐を感じたという。
 式典の後、会館では日語学校の生徒や県人会員らによる鳥取の「傘踊り」が披露された。800食分準備した同村婦人会による盛大な昼食会で来場者は懇親を深め、昔話に花を咲かせた。


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 第2アリアンサ90周年式典で、数年ぶりに〃故郷〃を訪れたという小橋節子さん(80、二世)は「木登りをし、満天の星空を眺めた記憶が蘇るよう。小学校時代の旧友とも再会できて、とても嬉しかった」と喜びを見せる一方、「小学校までは6キロもあって、毎日通うのは大変だった」という。他の郷友会婦人も「灼熱の大地を裸足で通学し、火ぶくれになったことも何度もあった」と振り返る。「子供心で楽しんでいたけど、両親は本当に大変な苦労をしていた。教育をきちんと受けさせてくれた両親のお陰で今がある」と感謝を滲ませ、先人の労苦に思いを馳せていた。

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