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20年超の実刑判決下る=国外犯処罰の陪審裁判=暴力団指示、東京で殺人逃亡

 東京都葛飾区で2001年6月4日未明、日系人の男2人が日本人男性の自宅に侵入しピストルで射殺、妻に重傷を負わせ、犯行後に帰伯逃亡した事件で、12月7日、聖市バラ・フンダ刑事裁判所で陪審員裁判が開かれた。日本政府はこの件で伯国政府に対して国外犯処罰を申請していた。聖州検察に起訴され、現在聖州アンドラジーナで勾留されているマルセーロ・フクダ被告、クリスチアノ・イトウ被告はいずれも犯行を認め、殺人と殺人未遂の罪で23年7カ月、22年1カ月の禁錮刑が言い渡された。事件発生から15年後、ようやく一審判決が下った。判決文の中で裁判官は、「計画的で残忍な、容赦し難い犯罪」と厳しく非難した。

「人殺しの烙印を捺されるのが怖かった。今はただ罪を償い、またいつか再出発できればという思いでいる」。被告人尋問でフクダ被告は淡々とそう語り、イトウ被告も「あの時の自分とは違う。一度も自分を見捨てなかった家族のためにも、罪を償いたい」などと俯きがちに話した。
 この事件は、イトウ被告の頭部の刺青写真とともに「ヤクザ絡みの殺人」と当地で報じられている。先月もレコルデTVが特集番組を放送し、公判当日はグローボが取材に訪れていた。
 当地メディアの報道は被告が暴力団に関与していたとの解釈も与えかねないものだが、「起訴内容は事実か」と裁判官に問われた被告らは、いずれも「部分的には事実」として「暴力団とは何の関係も無い」と話した。
 2人はいずれもデカセギ労働者として日本に渡り、犯行当時はソニーの工場で働いていた。
 2人とも被害者と面識は無く、50万円という報酬の話を受けて犯行に及んだ。被害者の双子の弟(既に無期懲役判決を受け服役)が暴力団の友人に殺害を依頼したとされており、事件にはこの人物と被告2人以外に、外国人を含めた少なくとも5人が関与され、いずれも逮捕されている。
 調書によれば、この暴力団の男はマルコス・イウラ(通称    Valti)という人物に「ヒットマン」を2人探すよう依頼。マルコス・イウラは外国人が集まるディスコの駐車場の管理人をしており、そこに通っていた2人に声をかけた。
「最初は断った。ディスコの中で、軽い調子で話していたらだんだん報酬金額が上がっていって、それでやるか、ということになった」。フクダ被告は当時21歳で、婚約者と3カ月だった子供をブラジルに残してきていた。「工場の生産量は落ちていたし、ブラジルに送金もしなくてはならず、金に困っていた」。
 2人とも日本語は不得手だった。Valtiのほかデニス・ユウジ・ヒロタという男も間に入り、殺害を依頼した人物と面会した。「話を引き受けてから、その日本人がヤクザだと知った」(イトウ被告)。
 被害者については「小児性愛者で少女売春をやっている」と説明された。暴力団の男から渡された拳銃の扱いを事前に練習した。
 2人は4日未明、デニスの運転する車で被害者宅に向かい、裏口のガラスを破って最初にイトウ被告が侵入。既に起き上がっていた被害者に発砲し、驚いて起きてきた妻を銃床で殴りつけた。フクダ被告が2発目を撃ち、その場を去った。
 犯行後、一人に50万円という話だった報酬は、2人で分けるように言われた。しかし追及はせずに受け取り、2人は6日に日本を去った。
 帰伯後は、フクダ被告は日本時代の知人との連絡を一切断ち、互いに連絡は取らず、それぞれモジ・ダス・クルーゼス、カンピーナスで生活していた。フクダ被告は04年に薬物取引で逮捕され服役している。イトウ被告は既婚で子供が2人おり、母親と姉妹、妻が法廷に姿を見せていた。


妻への暴力を「傷害罪」と訴え=検察官「罪はこれでも軽い」

 この事件では、被害者の妻が全治5カ月の重傷を負わされ、両被告ともが殺人未遂で起訴されているが、両被告の弁護人はこの容疑を否定した。
 イトウ被告の弁護人は「彼らのターゲットはあくまで被害者男性のみ。妻の存在は予想外で、殺意はなかった」とし、「殺人未遂罪」ではなく「傷害罪」とすることを求めた。
 フクダ被告の弁護人は「妻への暴力はイトウ被告だけによるもの。(フクダ被告は)何の援助もしていない。むしろ彼女を襲ったのは、夫に近づくのを阻むため」として、殺人未遂の罪は無いと訴えた。
 しかし、7人の陪審員はこの訴えを受け入れず、検察の起訴内容が全面的に受け入れられた。
 イトウ被告のイアラ・ナヴァス弁護人は、公判後の取材に「彼には奥さんへの殺意はなかったが、正当な判決が下されたと思う」と話した。
 担当のジョゼ・カルロス・コセンゾ検察官は「最高刑を求めていたが、予想していたよりも刑期は短かった。両被告ともに罪を認めていることが考慮されたようだが、最初は否認していたのだから、それは考慮されるべきではなかった」と嘆いた。
 被告側は2人とも控訴しない意向だが、検察としては「刑期延長の可能性があると判断すれば、控訴する」としている。

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