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婦人部からブラジル社会へ日本料理の普及を

リンス本願寺を支える婦人会の皆さん(2015年4月撮影)

リンス本願寺を支える婦人会の皆さん(2015年4月撮影)

 継承日本語を残して行くためには、地方日系団体が「日本文化クラブ」的な方向性を取り入れていく取り組みが必要ではないか―と18日付本欄で書いた。その中で、大きな柱になるのは、やはり婦人部の刷新だろう。大イベントを実施する地方日系団体の台所をのぞくと、例外なく婦人部の皆さんが、文字通り湯気を上げて大活躍している。だが高齢化が進んでいることも耳にする▼先日の聖南西会議の中で、ピエダーデの日本語教師から「JICAシニアの料理専門家がラーメン講座を開いたら、普段顔を出さない若い婦人たちがたくさん顔を出した。新しい日本食にはみんな興味がある」と発言していたのを聞き、「やはりこれだ!」と確信した。日本料理はブラジル社会でブーム化しており、作り方を勉強したがっている婦人が多い
▼地方文協が「日本文化クラブ」的な要素を強めるという方向に沿って、婦人部はどうなるべきか。日本料理の専門家集団であるわけだから、地域の女性に向けて日本料理講座をぜひ開いて欲しいと切に念願する。日系人、非日系人問わず参加できる日本料理教室を、会館の調理場を使ってできないか▼ブラジル人からすれば寿司、刺身、手巻き、天ぷら、ヤキソバ、スキヤキが「日本食」だ。焼き魚、煮魚、おでん、カレー、ラーメン、和風スパゲティ、クリームシチュー、ハヤシライス、ソーメン、お好み焼きなど戦後日本の一般家庭の定番料理がブラジル社会には知られていない。加えて、県連日本祭りでしか食べられない郷土食も素晴らしいお薦めメニューだ。トドメはスイーツ(ドッセ)類、日本の洋菓子のレベルは非常に高いからだ▼これは、醤油や味噌を作る地場企業はもちろん、味の素や日清、日本ハム、ニチレイなど食品関係の進出企業にも積極的に協力してもらいたい。日本食のすそ野をブラジルに広げる役割を、各地の婦人部ができるのではないか。幸いなことに、JICAシニアで3人も日本食の専門家が派遣されている▼〈1〉JICA、食品企業、各地の婦人部の三者が協調して「今年はカレーをブラジルに広めましょう」「来年は洋菓子を」「その次は和菓子」などとテーマを決める。せっかく聖市文協には「日本食普及委員会」という組織があるのだから、音頭をとってほしいものだ。〈2〉それに沿ってJICAシニアが、各地の婦人部がまず作り方をおぼえる。〈3〉と同時に、各地の日系イベントの食のスタンドで、その料理を出して広める。食品企業は食材を提供する。〈4〉美味しいと感じた地域の人を集めて、婦人部が料理講座を開く。この4段階を繰り返して行けば、普及のスピードは一気に早まり、毎年積み重ねられていく▼例えばヤキソバは、今では聖市セントロのセー広場で、シュラスコ・グレゴの横でブラジル人が普通に作って売っているほど庶民食と化した。だが、これは自然に広まったワケではない▼スザノ市の日系製麺企業が自社製品の普及のために、各地の婦人部に出張して、イベント料理としてヤキソバの作り方を教えたことから一気に広まった。日本でヤキソバと言えばソースが一般的だが、当地では餡かけが一般的だ。これは最初からイベントで出すのに都合が良いように、作り置きができる餡かけが指導され、それが一般化したからだ▼日本料理講座を通じて、新しい人材が婦人部に定着する効果を期待したい。今までは、婦人部に入ると義務的にイベントに動員されるというイメージが持たれている。事実、その献身的な無償奉仕によって支えられている部分がある。それで続けばいいが、無償奉仕では次に続く人が寄ってこない。これを機会にそこも改善したい。イベントへの協力を義務ではなく、アルバイト代を払ってもいいのではないか。とにかく、いろいろな生きの残り策を試す時期にあることは間違いない。(深)

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