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四世ビザ解禁に条件付き賛成/日本人並の高校卒業率達成が前提

提言書52頁の日系四世に関する部分

提言書52頁の日系四世に関する部分

 11日付7面に掲載した共同通信記事「高齢者、外国人材の活用を=自民党の1億本部が提言」には、自民党の1億総活躍推進本部が、少子高齢化に伴って働き手が細っていく中、外国人材の積極的な活用を求める提言をまとめ、《日系四世への在留資格の拡大》を盛り込んだとあった▼つまり四世ビザ解禁がかなり進展している。おそらく、人手不足に苦しむ中小企業が経済産業省に訴え、その筋が中心になって自民党を動かしている。というのも、同じ7面のトップ記事は「デカセギでなく後継者求む=経産省主催の合同企業説明会」だったからだ▼日本の製造業は人手不足で苦しんでいるが、《少子高齢化に伴って働き手が細っていく》ことが最大の原因ではない。バブル期以降、「日本人の若者が単純/肉体労働をやりたがらなくなった」ことも大いに関係する▼やりたがらない日本の若者に従事させるには、高い賃金が必要だ。だが日本の製造業は、安値競争をせねばならず、人件費の安い東南アジアに工場を移転するか、日本国内に残るなら安い外国人労働者に頼るしかないのが現状だ。外国人労働者はかつて日系人が大黒柱だったが、今では外国人技能実習制度で来る人(中国、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)が中心だ▼外国人たちはセッセと働いているにも関わらず、「雇用の調整弁」的な役割をおっている。そんなデカセギがいるから工場が続けられ、地元日本人の雇用が維持される関係だ。実習制度は本来「3年限定」だが、東日本大震災復興や東京五輪の建設需要の増大に対応するため、新制度を作って2年間延長した▼その様に一時的な労働者だけでなく後継者不足も深刻化する中、三世までの日系人向け特別定住ビザを、四世まで拡大する検討を本格的に始めた訳だ。これに関しては「日系子弟の日本人並の高校卒業率達成が前提」だと思う。かつて三世までが訪日就労したことで、その子弟のうち何万人もが日本語もポ語も中途半端になってしまった。今回はその反省を活かして、「在日子弟の教育問題」解決を前提条件にすべきだ▼というのも、以前、日本から来た教育問題の専門家に「日系子弟の高校進学率は約3割」「大学卒業者は非常にまれ」という話を聞いたからだ。親が一生懸命に仕事をしてお金を稼ぐ間、一緒に訪日した子供は公立学校に適応できず、成績不振、不登校、酷い場合は不良化する。もしもブラジルに住み続けたら、多くが大学まで進学してそれなりの職に就ける日系人。訪日したがために、日本社会の下層に組み込まれてしまうのであれば、行かない方が良い▼だいたい、単純/肉体労働はいずれ人工知能技術の進歩で機械化され、雇用が激減する可能性がある。そうなった時には「ポイっと使い捨て」にされてしまう。日系子弟の将来を、日本の産業生き残りのために犠牲にするような政策であれば、オカシイ。日本国外務省や来伯した政治家が「日系社会は日本の宝」と言ってきたことと、真っ向から対立する話になる▼日本は外国人労働者に関して、「Win―Win(互恵関係)に見せかけて、実際は弱みにつけこんでいるだけ」的な政策をとりがちだ。「技能実習制度」がその典型で、「日本で技術を学ぶ」という建前なのに、実際は「祖国に持ち帰るような先端技術はほとんどなく、単純労働力として安い賃金で使われるだけ」という指摘が日本のメディアには溢れている▼その中に、再び日系人をほうり込むのが「四世ビザ解禁」であるのなら反対だ。日本人の高校卒業率が9割を超えていることを踏まえ、「日系子弟も同等の高校卒業率」を達成することが四世ビザ解禁の条件ではないか。日系人は使い捨て労働力ではない。四世を新しく入れる以前に、日本国内に今いる日系人のことを、まずはしっかりと手当すべきだ。本当に「日本社会の後継者」にするのであれば、彼らをグローバル時代に向けた多文化/多言語人材と捉えて、文科省も深く関係して義務教育の現場からテコ入れをし、幼少時からの子弟教育に力を入れることが大前提だ。(深)

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