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日本就労査証は解禁されるのか?=自民党提言書への本人らの声=デカセギ熱望と同時に不安点も

ブラジルの旅券

ブラジルの旅券

 昨年4~8月、CIATE(国外就労者情報援護センター)が在伯日系人三世、四世を対象に日本に対する意識調査を行った。10月に発表された結果では、自由記入欄に四世へのデカセギ就労ができる特別定住ビザの解禁を求める声や、回答者の周囲に訪日就労を望む四世が多数いることが分かった。日本側も四世ビザに関する検討を進める動きがあり、在日ブラジル人コミュニティも含めて、これに関するいろいろな意見を関係者に聞いてみた(國分雪月記者)。

 CIATE調査の回答率は、「日本での労働を望む四世の知り合いがいる」が53・8%、「四世だが日本で労働をしたい」が17%だった。しかし訪日を望む回答者の多くの日本語能力は「基礎」46・6%というレベルだ。次いで「全くできない」の回答率は27・4%となり、中級18・2%、上級7・8%と続いた。
 さらに訪日を望む理由としては「観光地を訪れたい」(48・3%)、「職業経験を積みたい(キャリアアップ)」(43・1%)「文化交流」(42・9%)、「留学」(34・1%)、「お金を稼ぎたい」(34・1%)と日本の生活や文化体験を望むような回答が多かった。
 今回は、訪日就労を望む四世に取材を行い、日本での就労に対する意識を聞いた。

▼四世ビザを熱望するネット上のグループの声

 

 Facebook上で作られたグループ「Visto japonês para yonsei, quarta geração!」(四世にもビザを)では、四世の日本就労ビザについてのニュースを逐一流し、議論の場を提供している。グループに参加しているのはビザ解禁を待つ四世、その他の日系人なんと約6400人もいる。
 同グループは通信アプリWhatsAppでグループ「Saga Yonsei」も設立し、同様の活動を行っている。
 その同グループ内でこの5月12日、ポ語ニュースサイト「Japane」の記事のリンクが拡散された。
 自民党の1億総活躍推進本部(本部長・川崎二郎元厚生労働省)がワーキングホリデー制度による日系四世の受け入れや、高齢者の就労機会拡大のための提言書を自民党の加藤勝信大臣に提出したという報道だった。
 ニュースを読んだ四世らは早速議論をはじめたが、ほとんどが「ワーキングホリデーでは1~2年程度しか滞在できず、家族を連れて行けないのでは」と不安を示し、「1年でなにができるんだ、稼げると思っているのか」などと怒りを表す人もいた。
 他にも「滞在期間を更新できるんじゃないの?」「こんな制度を利用するぐらいだったら旅行で行った方がマシ」「稼ぐために日本に行きたいけど、3児のシングルマザーだからこの制度だと難しい」「三世も最初は家族を連れて行けなかった。観光ビザで日本に行き、期限を更新した。同様のことをわざわざ四世にまですることはないと思うけれど…」「ニュースを読んだけど、これは大きな一歩だ。ちゃんとした労働ビザになるのでは」「1~2年だと労働ではなく、アルバイトしに行くみたいだ」と批判や制度更新を期待する声が上がった。

▼四世も期待する「日本での良い生活」

 同グループに所属し、四世向け就労ビザの解禁を待つ浅沼アキラ・ダヴィジさん(四世、26)に取材してみた。
 彼は2001~09年の間に3度日本に住んだ経験がある。最初の訪日時には日本の小学校に通ったため、ひらがなやカタカナ、少量の漢字の読み書きが可能だ。
 両親は岐阜県の繊維や車部品工場、建築現場で働いた。浅沼さんは08、09年の当時18歳のときに家計を助けるため、日本で働いた経験がある。08年のリーマンショックで日本が不況に陥り、翌年にやむなく帰国した形だ。
 現在はパラナ州ロンドリーナ市のピタゴラス大学で法学部の夜間授業を受けており、来年卒業予定だという。「もし四世向けの就労ビザが解禁されれば、卒業後に妻と2歳の息子を連れて日本に行きたい」とのことだ。
 提言書のビザについては「これはただの始まりに過ぎない。その内滞在期間が延長されると思っている。1年だけなら日本に行かないほうが良い」とした。
 「僕は日本で人生を作りたい」と話した浅沼さんは、「息子と妻と一緒に日本に行きたい。妻と一緒に働いて、息子を日本の学校に通わせたい。貯金して車と家を買うんだ」と日本での新しい人生への望みを語った。
 ゴイアス州のアナポリス・エヴァンジェリカ大学で会計学を学ぶ杉山ジョゼ・フミコ・ダニエリさん(四世、21)にも聞いてみた。
 彼女の父親はいま、日本で働いている。「父はデカセギに行って、そのまま」。ダニエリさんは日本文化に強い憧れを持っている。「日本に行き、日本の文化に囲まれて生活をするのが長年の夢。生活の質が高く、治安も良い。ブラジルより高い給料ももらえる。しかも家族皆でまた一緒に住めるようになる。全てが私の夢」と日本の生活の希望を話した。

労働場所イメージ画像(引用/Ben_Kerckx, 2015(pixabay))

労働場所イメージ画像(引用/Ben_Kerckx, 2015(pixabay))

 ダニエリさんの母親も「まだ日本に行ったことないし、ビザも解禁していないのでどうなるかわからない。良い方向に進めれば良いと思っている。お金を稼いだ後は、ブラジルへの帰国も考えている」と話し、娘への四世就労ビザ解禁を希望している。さらに母親も「最初は工場で働く。生活にも慣れ、日語が出来るようになったら、もっと良い職に就きたい」と思い描いている。
 今回の自民党の提言についてダニエリさんは、「これはまだはじまったばかり。長期間滞日したい人や家族を連れて行きたい人のために、制度が変更されれば良いと思う。家族と長い間離れて暮らすのは、とても寂しいことだから」と語った。

 

▼四世である子を連れて訪日希望する母親たち=子どもと訪日を希望する母

滞日当時のYさん

滞日当時のYさん

 四世の娘を2人持つ母親YSさん(三世、43)にも聞いてみた。00年~03年、静岡県の食肉加工工場で働いた経験があるYSさんは、「同僚が教えてくれたから、日語の問題はなかった。文化や生活の違いもなかったし、また戻りたい」と訪日を熱望している。
 娘と一緒に行くことを考えているため、「日本にはすぐに四世へのビザを解禁してほしい」と強く四世ビザの解禁に賛成した。YSさんは以前、観光ビザで入国して3年違法滞在したという。そのため、次回日本に行く際にビザがすんなりと取得できるか不安を抱えている。
 YSさんは「3年ぐらい日本で労働、お金を稼いだ後ブラジルに帰国する予定。ずっと住むつもりはない」と日本での就労について語った。
 同じく四世の子どもを3人持つオノリオ遠藤ロドリゲス・パトリシアさん(三世、38)は、家族で日本に就労しに行くことを望んでいる。
 それぞれ18、13、9歳の長女、息子らも日本行きを希望しており、オノリオさんも18歳のときに1年間、滋賀県の車部品工場で働いた。00~03年にも1歳6カ月だった長女を連れ、兵庫県の弁当屋で働いた。
 日本語を勉強したことはないが、周囲にブラジル人労働者がいたこと、ブラジルの食材も売っていたため、日本での生活で特に悩むことはなかった。「職場には通訳もいたし、言葉には困らなかった。ブラジルが懐かしかったぐらいね」と振り返った。
 「四世への就労ビザはすぐに解禁するべきよ」と断言したオノリオさん。「その内二、三世のように望むときに滞在期間の更新ができるようになる」と予測した。
 また、「日本は労働力が必要ならすぐにビザを解禁するべき。働きたい四世はエネルギーで一杯なんだから」と再度早急なビザ解禁を求めた。

▼母が亡くなった地、日本への想い

 「日本に行ったことはないけど、お金を稼ぎに行きたい」と訪日希望の理由を語った池田レナンさん(四世、30)は、現在サンパウロ州内陸部のサンタフェ・ド・スル市の養殖場で働いている。
 四世向けのワーキングホリデー制度に関し、「定職についていて、良い給料ももらっている。だから1~2年の滞在期間じゃ行く意味がない」と考えている。
 彼の母は池田さんが2歳のときに訪日し、ネットのビデオ電話で頻繁に連絡を取り合っていた。池田さんが17歳のとき、当時19歳の兄と一緒に日本に連れて行こうとしたが、ビザが下りず失敗に終わった。
 「それ以降は会っていない。母は私達がブラジルの大学を卒業することを希望したので、その通りにした。母は25年間、日本に住み、職を転々としていた。ずっとビデオ電話で連絡を取り合っていたが、3年前に訃報が届いた。49歳だった」と明かした。
 「ビデオ通話をした次の日に心筋梗塞で亡くなったと訃報が届いたんだ。もう会えないことが本当に悲しかった」と繰り返し、悲しみを表した。訃報が届いた後、兄と一緒に訪日を計画したが金銭的な理由で諦めた。
 池田さんが日本に行く最大の理由は、愛知県豊橋市にある母の遺品を受け取りに行くためだ。「今、母が日本で結婚した義父の家に遺品がある。もちろん、もし3年ほど滞在が可能な就労ビザが解禁されれば、日本で働くことに興味があるので行きたい。でも来年2月に旅行で訪日を考えている」と語った。

▼「地域ごとに在日四世の数を管理したら?」

山本ジャンゴさん

山本ジャンゴさん

 「Saga Yonsei」の管理者の1人、山本ジャンゴさん(四世、23)はUniInterの夜間授業で法学を学んでいる。「もし就労ビザが解禁されれば、卒業前でも行きたい。家族が日本に住んでいるんだ。ほかにブラジルにいるのは21歳の妹」とのことだ。
 今回の提言書の内容については、「日系四世が日本に働きに行くことは、日本の経済成長にとって良いことだ。でも大量の移民を受け入れることが難しいこともわかる。今回自民党が出した提言は、四世と受け入れる市や町の両方を傷付けない良い方法だと思う」と賛成意見を述べた。
 理由については「どこかの地域だけ特別に、四世の人口が急増して負担になることがないように、日本の各県は移民を受け入れるための規則や基準を設ければ良いと思う。経済成長が目的だから、労働力が各地に分布することは理にかなっているのでは?」とした。
 山本さんは「もし就労ビザが解禁されて日本に行くことになった後、帰国するかどうかはわからない」と考えを巡らせ、「日本語もわからないし、多分最初は工場で働くことになると思う」と日本での生活を予測した。

▼帰伯後にポ語で悩むデカセギ子弟

 ブラジルでデカセギ労働希望者に仕事を斡旋する人材紹介会社「イチバン」(有吉クレベル社長)。本社をパラナ州マリンガ市に構え、パラナ、ミナス、サンパウロ州と日本に9つ支店を持つ。ブラジル現地のテレビでもCMを打つなど人集めに熱心なところだ。
 デカセギ希望者への仕事の紹介、旅券の手続きや社会保険加入の手続き方法なども紹介しており、旅行用、二~四世のための特別定住査証の発行手続きも行っている。

左から大原ロライニさん、母、エステルさん

左から大原ロライニさん、母、エステルさん

 イチバンで働く社員の中には元デカセギや、デカセギ子弟も多い。「赤ちゃんの頃、確か1歳のときに日本へ行きました」と話す大原エステルさん(四世、20)も、その1人だ。
 エステルさんは日系三世の母とイタリア系の父に連れられ日本に行き、15歳でブラジルに戻った。日本ではブラジル人幼稚園に通い、小学校4年生から地域の小学校に通った。「日本語も他の教科も楽しかったし、皆が教えてくれました」と振り返る。
 その後、ブラジル人学校の学校に入り直し、卒業後に帰国。ブラジルの高校では日本式の学習方法に慣れていたこと、ポ語能力に問題があったことで、卒業が一年遅れたそうだ。「ポ語のルールが日語と全然違うので、漢字を覚えるより難しかった。日本のとにかく暗記するだけの勉強と違い、ブラジルでは理由や経緯を知っていなければならない」と語った。
 高校卒業後、2015年3月からイチバンで働き始めた。一日5人以上のデカセギ希望者の相談を受け、希望に見合った職場を紹介している。
 ブラジルへの帰国後、母に日本へ戻ることを相談したが叶わなかった。「妹と一緒に日本に戻って、日本で人生を作りたい。日語を勉強して普通の会社に入りたい」と夢を語った。
 エステルさんの妹、ロライニさん(同、16)は、日本にいた間、地域の公立小学校に通い、他の外国人児童6、7人とともに週1、2回の個人指導を受けた。「日語は一年間で授業についていけるレベルになりました」と話した。
 小学校卒業後にブラジルに帰国した。だが、現在ブラジルで通う高校での苦手教科はやはり国語(ポ語)だそうだ。
 姉と同じく日本に戻りたいとは思っているが、「デカセギとして働きたくはない」と一言。「両親は寝ないで仕事に行くこともあった。私が2歳のとき、ストレスで精神的な症状が出たこともあると聞いた」と明かした。
 四世のデカセギビザ解禁については、「労働者は苦労してお金を稼げば生活は安定するけど、その子どもが日語に慣れ、帰国後にポ語の問題を抱えるケースが多い。ブラジルで育った四世には大卒など学歴のある人も多い。そんな人を工場ばかりで働かせるのはどうかと思う」と意見を述べた。

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