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『百年の水流』開発前線編 第三部=リベイラ流域を旅する=外山 脩=(16)

 ファミリア・マガリオ

 リベイラ流域では、時代が下ると、植民地や集団地とは関係なく──若しくはそこから脱して──独自に土地を入手して営農する邦人、日系人も、少なからず現れた。
 農業界で生き残って活躍した‥‥あるいは活躍しているのは、むしろ、そういう人々である。
以下、筆者が取材できたその事例を数件紹介する。いずれもバナナ作りである。(前項で触れた様に、バナナは戦後、生産過剰で低迷期に入ったが、その後、回復、勢いを取り戻した)
 2012年の6月頃と記憶するが、筆者が、サンパウロで知人とリベイラのバナナについて、話をしていた時のことである。その人が、頻りに「マガリオさん」という名を口にした。筆者は、この時も(何国系の人だろうか?)と思った。
 が、やはり日系人で曲尾と書き、そのファミリアは二、三代目になっているが、バナナの栽培と仲買を大きく営んでいて、業界ではよく知られた存在だという。
 資料類で調べてみると、初代は良顕(ヨシアキ)といい、長野県人である。1918年に渡伯、1955年、セッテ・バーラスでバナナ作りを始めている。
 海興の植民地とは──リベイラ河を挟んで──反対側の土地だった。曲尾良顕という名は、1960年代にまとめられた資料類に、すでにこの地域の代表的なバナナ作りとして登場している。
 その二代目が、エジソン六郎さんで、この人に会って聞いた処によると、セッテ・バーラスとミナス州ジャナウーバで栽培を、サンパウロのセアザで仲買をしており、二人の娘さんとその配偶者が一緒に仕事をしているという。
 ミナス州ジャナウーバは、レジストロ出身の山田勇次さんが、バナナの灌漑栽培で成功、市長になったムニシピオである。
 エジソンさんは、1946年の生まれで、セッテ・バーラスでは8~9才の頃から、毎日、小学校から帰ると、バナナ園で草刈りをしたり、苗を植えたりした。学校は8、9キロ離れた処にあった。
 「兄たちは、バナナの房を切り(収穫し、の意)、馬で3㌔先のリベイラ河の岸まで運び、
船へ積み込みました。積込みは夜中の2時から始めました」
 という。
 当時、邦人農家の多くは、こういう具合に、少年期の子供たちまで動員して仕事をしたものである。そのバナナの多くは水路でジュキアへ、そして鉄路でサントスへ、さらに海路でブエノス・アイレスへ送られていた。
 国内向けは、サントスから鉄路や陸路で、各地のセアザへ運ばれた。
 ファミリア・マガリオは、初めはコチア産組に属していた。組合から営農資材を借り、バナナを栽培・出荷、年末に精算した。
 が、一向に残らない。そこで、サンパウロに店を開いて自分で売った。やがてセアザに販売ポストを持った。
 以下は、別の筋から聞いた話であるが「仲買商としてのマガリオさんは、1983年、リベイラ流域で大水害が発生、全域に渡ってバナナ園が壊滅的な被害を受けた時、素早く他の生産地からバナナを買い付け、セアザに運び込んだ。市況は大高騰していた。
 これで事業を飛躍させ、コチアの競争相手になるほどに大きくなった。1994年、コチアが解散した後は、セアザで市場をリードする様になった」そうである。
 なお、セッテ・バーラスその他には、マガリオ姓の大きなバナナ作りが、ほかに何人か居り、親戚だという。一族が同じ作物を二代、三代と継承して栄えているといった類の話は、日系農業界では実は珍しい。
 なお、バナナはリベイラ最大の農産物であるが、バナナ作りは減少を続けており、小規模生産者も含めて3,000家族以下であろう。
 内、日系がどの位を占めるか──については、何処で誰に訊いても、判らなかった。ただ「一応の規模の生産者は50家族くらい」という説があった。昔に比べると激減しているようだ。

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