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ジャパン・ハウスを訪れた正直な感想=サンパウロ市在住 山本 紅

夜のジャパン・ハウスは特に隣の銀行が良く目立つ

夜のジャパン・ハウスは特に隣の銀行が良く目立つ

 テレビなどで連日報道されているわがサンパウロ市のジャパン・ハウスに行った。
 数か月前、テレビで大々的に報道された檜のファサード(建物正面)を見るために、わざわざ夫とパウリスタ大通りまで出かけたが、少々がっかりして帰って来た。
 これは檜を格子状に組み上げた「地獄組」と呼ばれ幅36メートル、高さ11メートル重さ合計6トン以上の大掛かりなモノといわれたが、周りの建物に比べるととても貧弱なのだ。
 建物も隣のブラデスコ銀行から間借りしたような感じで、使われている板も薄く、天下の組み合わせの「地獄組」といえども見栄えがしない。
 行ってみてもっとがっかりした。正面の「地獄組」だが雨の後なので、サンパウロ特有の真っ黒な埃、粉塵、スモッグなどがへばり付いていて汚い感じ。メディアがあれほど取り上げた竹のオブジェだが思ったよりも小さい、特に外庭に置かれたのは色も薄く存在感がイマイチ。
 竹のシアターで上映されていたアニメの「かぐや姫」(10分ほど)だが、姫が竹のごとく早くに成長するのはわかるが話があまりにも飛躍していてわたしにはよく解らなかった。このシアターは竹の空間のためか外からの雑音が無く、観客は(10人ほど)靴を脱いで畳の上に寝っ転がってこのアニメを観るようになっている。
 竹細工の小物や茶道具などはわたしには馴染みのもので珍しくない。竹某斉、竹某衛門など著名な作品が展示されていて、ただのオブジェから形の大きなざるや花瓶などもさすが名人と唸らせるものがあった。日常使われているざる類や、魚を入れるビグなどは形も面白く実用的だ。
 2階にある薄くした竹の皮を編み上げた大きなオブジェは色も濃く形も素晴らしいと思ったが、置かれた空間があまりにも小さくてせっかくの存在感が薄れたと感じた。もしこれが建て上げの高いもっと大きな空間に置かれていたらきっと素晴らしい芸術作品になっていたに違いない。
 ふろしき売り場があり、風呂敷を使ってバッグにしたり、ビンを包んだり、小物入れに使ったりと色んな用途に使われ展示されていた。売られている風呂敷は色彩もデザインもきれいで、壁掛けにしたり洋服にも使えるのではないかとわたしは想像した。
 珍しかったのは沖縄の「芭蕉布」という布地。バナナの一種の幹から繊維を取り、外側から順次4段階に分けて使われる。一番内側の繊維から上等の布地が織られ、薄く丈夫で涼しく値段も随分高いらしい。
 200本ものバナナの幹から一反の布地が織られるそうだから無理からぬこと。布地も展示されていたが、ガラスの向こう側で手を触れられなかったのが残念だが、全プロセスを画像で上映していた。
 レストランは時間が早かったので残念ながら試食でできなかったが小さい、喫茶もあったがチマチマしたスペース、本も展示していたが見そびれてしまった。
 週末には長蛇の列ができるそうだが、平日の午前中にいったので、人もまばらでゆっくりと回れた。シアターには6分待ってくれといわれたのはアニメの途中から入れないためらしい。
 全体を見たわたしの意見をいわせてもらいましょう。
 日本人の器が小さくなったと感じた。官僚のことなかれ主義が見え見えでつまらない。ブラジルは三等国でも日本を訪れたい裕福層は教育水準も高く、文化面でもハードルが高いことを認識してほしい。
 お金を使いジャパン・ハウス(日本の家)という名前が付く建物なら、この文化施設を見るだけで日本に行ってみたいという気を起こさせるほどの展示物をしてほしい。
 建物も大きく(せめて建物の地階全部を使うなど)、スペースも十分に取り、焼き物、反物、工芸、日本画、楽器等々、数が少なくても日本が世界に誇る物を展示して、他に竹細工展、浮世絵展、などを特別展示するようにしたらよいのではないか。
 今回のような小模様の展示ばかりしていると観客が衰えるし、数が少ないから見ても満足感を味わえないと思った。

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