下院の政治改革委員会で13日、報告官のヴィセンテ・カンジド下議が作成した意見書に、18年大統領選出馬をめざすルーラ元大統領の逮捕回避のため、選挙法にある候補者の不逮捕期間を延長する項目が付け加えられていたことがわかり、問題となっている。15、16日付現地紙が報じている。
選挙法改正に関する書類は4月末に提出されたものだというが、カンジド下議が政治改革委員会に「2018年選挙からは、候補者は選挙(投票日)の8カ月以内は逮捕されない」との項目を加えた意見書を提出したと報じたのは15日付エスタード紙だった。
現行の選挙法第236条では、候補者が逮捕されない期間は「投票日の15日前から」となっているが、その規定を大幅に拡大するものだ。
カンジド下議はルーラ氏の労働者党(PT)所属で、同下議の意見書は8月3日に同委員会で審議されることになっている。同下議によると、この項目は確かにルーラ氏を助けるが、本当の意図はルーラ氏だけでなく、検察や警察が捜査中の全ての政治家を守ろうと考えたという。同下議は、政治家に対する捜査では検察や警察の権力が濫用されており、現状改正が必要だという。
だが、同下議がこの項目を含む意見書を提出したのは、パラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事が、サンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介した収賄の容疑でルーラ氏に9年6カ月の実刑判決を下した翌日のことだ。
しかも、「8カ月前」という判断も絶妙だ。それは、リオ・グランデ・ド・スウ州の第4連邦地域裁がルーラ氏の第2審(控訴審)を行うのが最速でも来年の1月18日で、同裁長官も「裁判は来年の8月までに行われる見込み」と語るに止まっているためだ。フィッシャ・リンパ法では、複数の判事による裁判で有罪とならないと、出馬停止にはならない。
カンジド下議が加筆した意見書は8月の委員会で審議後、下院本会議を経て上院に回されるが、18年選挙から適用されるためには9月までの成立が不可欠だ。
だが、下院では早速、同提案に対する波紋が広がっている。ロドリゴ・マイア議長(民主党・DEM)は「初耳だ。こんな法案が下院を通過するはずはない」と語り、同党下院リーダーのエファイネ・フィーリョ下議も「政治改革を審議すべき時期に何という提案を。承認の可能性はゼロだ」と憤りを見せている。
また、PTと同じ左翼政党の受けも悪く、社会自由党(PSOL)のイヴァン・ヴァレンテ下議は「民主主義の助けにはならない」、レデ(REDE)のランドルフ・ロドリゲス上議も「はずかしく、嘆かわしい」と批判している。