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JH=「日本人の原点を現代に」=『里山』展開催、来月12日まで

展示に期待を語った成澤さん

展示に期待を語った成澤さん

 自然と共存してきた日本人の原点が里山に―。ジャパン・ハウスは、世界的に著名な日本人シェフ成澤由浩氏(48、愛知)とブラジル人写真家セルジオ・コインブラ氏による写真展『里山』を先月19日開始した。入場無料。来月12日まで。
 同展は、同名の書籍『里山』の発売に先駆けて披露されるもの。両氏が3年間に及び各地に日本食の秘密を探し求め、そこで出会った食材やそれを生み出す背景、生産者だけでなく、昔の食習慣や食材の歴史を再解釈した料理等およそ80枚の写真等が展示される。 東京都港区にミシュラン2つ星レストランを構える成澤氏は、10年に世界最高峰の料理学会マドリッド・フュージョンで「最も影響力のあるシェフ」に選出されて以来、数々の賞を受賞。「持続可能性と美食」をテーマに、自然保護に関る料理を発表してきた。
 また、およそ10年前から里山をテーマに、その文化が本来もつ心身ともに有益で環境に配慮した持続可能な美食「里山キュイジーヌ」を提唱してきた。「日本文化を考えたとき、必然的に浮かんだのが里山だった。日本人の根本となるものを見直し、現代に蘇らせたかった」と意図を語る。
 そんな成澤氏の代表的料理の一つが「土のスープ」だ。「顕微鏡観察すると、無農薬有機肥料で育てている土には無数の微生物がいる。たんぱく質豊富で旨みがある」と語り、土の付いた牛蒡と水のみで調理される常識を覆すような一品だ。
 「土は足に踏まれるものと思われているが、そうではない。食べられるほど安全な土もある。生命を育む地球で一番重要な要素」と続け、「単なる美味しいものではなく、精神的なものに一歩踏み込みたかった」と思いを語り、料理を通じて環境保護を訴える。
 各地を旅するなかで、「年々とジュンサイやあおさのりの生育が少なくなってきている。年々自然環境が悪化している」と感じたとか。「環境を崩さないように共存していかなければならない」と見据え、同展に期待を込めた。

 

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 山と海に挟まれたわずかな土地で自然と共存してきた日本人の在り方を再考する『里山』展。山に降り注がれた雨が土に染み渡り養分を蓄えて川から海へと流れ、海の幸を育てるという循環する自然のサイクルのなかで、清流の恩恵を受けて自生する山葵やせりなどの繊細な食材や、自然の力を利用した発酵技術などが仔細に紹介され、日本食の奥深さを探求できるような構成になっている。同展の関連イベントも随時行われている。詳細は、JHホームページ(www.japanhouse.jp/saopaulo)まで。

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