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《ブラジル》アリアンサで日本研究講座=「JAPANOLOGIA」=ブラジル人社会人類学者が講演

講演中のヴィクトル博士

講演中のヴィクトル博士

 アリアンサ(日伯文化連盟、大城幸雄理事長)が28日、サンパウロ市のピニェイロス文化センターで来年から開講する日本研究講座「ジャパノロジーア」を担当する社会人類学博士教授ヴィクトル・ウゴ・マルチンス・ケベ・ダ・シウヴァ氏(35)による講演「ジャパノロジーア―日本・日本文化との接し方―」を開催した。会場にはアリアンサと提携を結んだ広告マーケティング高等専門学校(ESPM)のアジア研究所所長ファウスト・ゴドイ氏や学生など約80人が集まった。ヴィクトル教授は自身の訪日経験などを交えながら日本研究の意義や目的等について講演した。

 

 ヴィクトル教授はサン・カルロス連邦大学の社会人類学教授。また静岡大学、南山大学人類学研究所などで研究員を務める。妻が日系で、日系社会との繋がりがあり、日本文化にも強い関心を持つ。03年から日本についての研究を始め、研究のために3回訪日した。現在は沖縄県や文化、多国籍家族が主な研究テーマとしている。

 教授は、「ブラジル人が抱く日本人へのステレオタイプ(先入観)は『多くの日本人は他民族と混じらない所謂純血で、大卒・大企業勤めが大多数』ということ」と説明を始めた。

 さらに「日本は多文化社会だと考えている」との見解を示し、日本国内にアイヌ民族、琉球民族、部落民、在日日系人の4民族が存在することを説明。「これだけでも私達が持っていた日本人のイメージとは違うでしょう」と会場に語りかけた。

 また「日本人は毎日寿司を食べると思われている」と食文化や生活に対する認識のズレも指摘。「私達は約100年間も日本移民の存在に触れてきたのに、彼らについて何も知らなかった」と語り、「大きな日系社会があるブラジルでは、日本人に対する先入観を安易に日系人に当てはめることでアイデンティティーを誤解してしまう可能性がある」と述べた。

 講演後の質疑応答では在日日系人のアイデンティティー問題について説明を求められ、浜松市市役所でボランティアとして在日ブラジル人子弟にポ語を教えた経験を紹介。

 子弟らに「自分の夢を描く」という課題を出した際、ほとんどの子弟が将来の夢ではなくオートバイなど今欲しい物を描いてきた。また日語能力の問題で自閉症と診断される子弟が多いことに触れ、「保護者と触れ合う時間がない、言葉がわからない等の問題を抱え、勉強や発達に遅れが出る子もいる」と説明した。

 

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 アリアンサの講座「JAPANOLOGIA」の内容は①日本人とは誰なのか?②ブラジルにおける日本文化③日本の伝統文化④アレンジされた日本文化⑤「文化」について。ヴィクトル教授は日本についての研究のほとんどが日語で行われていることを不安視し、「国際的に普及させることが難しい研究分野だが、同講座では日本について高いレベルで議論できるようにしたい」と語った。人類学者から語られる日本の姿も面白いかも。

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 ヴィクトル教授の講演前にはアリアンサの「風呂敷」講座の鎌谷ソフィアさんも風呂敷の使い方を実演した。「日本の良いものを紹介したい」と語った鎌谷さんは「ビニール袋を使わないので環境にも財布にも良く、贈り物の包装としても喜ばれる」と風呂敷の利点を説明しながら独自に編み出した包み方や鞄の作り方を見せた。来場者からは「おぉ~」と感嘆の声が漏れるなど良い反応。風呂敷の良さがしっかりと伝わったかも?

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