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国際平和のために24人も殉死したブラジル軍

国連軍のキャップを被り、軍事行進が行われた

国連軍のキャップを被り、軍事行進が行われた

 ガロア(霧雨)がそぼふる中でも微動だにせず――サンパウロ市内のブラジル陸軍の南東軍司令部では1日、国歌斉唱が天に轟くかのごとく響きわたった。おりしも当地のお盆「フィナードス(死者の日)」の前日のことだ。ハイチにおける国連平和維持活動(以下、PKO)の任務を成功裏に終えて、無事に帰還した同司令部所属の隊員を顕彰する式典が執り行われたときのことだ▼「国際平和」という崇高な理想のため、作戦遂行において尊い命を失った24人の隊員。その魂にとどけとばかりに響く歌声に、心を揺さぶられハンカチで涙を拭う遺族の姿があった。ハイチという外国の治安維持を任された国連軍の中心となった彼らに頼もしさを覚えると共に、ブラジル国歌の中の歌詞《我らは逃げずに戦う。祖国のためなら死をも厭わない》との一節が重くのしかかってくるようだった▼歴史を紐解けば、第2次大戦後の1948年、独立を目指すイスラエルとアラブ諸国との間で第一次中東戦争が勃発。その際、パレスチナへ国連休戦監視機構が派遣され、国境や停戦ラインの監視を実施。これが国連のPKO活動の先駆けとなった▼伯国はまさにその第1回目からPKOに参加し、国際平和の構築に貢献してきた。これまでの参加回数は50を優に超える。特に、歴史や文化的に近しい国々での活動に優先的に参加。ポ語圏では、独立を果たすも政情不安定なアンゴラ、モザンビーク、東チモールなどで成果を挙げてきた▼国連安保理改革を睨み、国際場裡において存在感を発揮したい伯国にとって、今回のハイチPKOは格好の舞台となった。21カ国のうち中南米13カ国が参加したという異例の作戦であり、13年間に及んだ任務において、26派遣団が編成され3万7千人の伯軍人が出動した。13年間の司令官13人のうち、実に11人が伯人で占められた▼00年の大統領選の不正疑惑により、武装勢力との間で抗争が激化し、04年に内戦状態に陥ったハイチ。武装解除、社会復帰(DDR)による平和構築の過程においては、04年から06年には武装集団との激しい戦闘で命を落とした隊員がいた。10年にはマグニチュード7の大地震が襲い、およそ30万人の死傷者を出した。そのなかには、志半ばで殉職した18人の伯軍人も含まれていた▼今年は大型台風に襲われ、任務が延長されるも、先月15日に任務を終えて第26派遣団も無事帰国した。過酷な任務を全うし、井戸採掘、橋やダムの建設、道路の建設及び修復など、今後のハイチの発展の礎となるインフラ整備にも尽くした▼グローバル化の進展によって複雑にからみ合う世界において、遠く離れた国での紛争はもはや対岸の火事ではない。地域の不安定化に繋がり、経済軍事両面において自国の脅威となり得る。それはどこの国においても一緒だろう。フィナードスの日だからこそ、我々がブラジルで豊かな生活を享受できているのは、国を護るために犠牲となった全ての英霊のおかげだと、素直に敬意を表したい。(航)

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