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どこから来たの=大門千夏=(69)

「あーー夢に見たボンベイ!」と叫ぶとゲッチイは、「新婚旅行にボンベイに行ったのよあの二人…しかしすぐに破たんする。幸せとお金は関係ないわ」
「うう…んん。でもねェ幸せって言うのはやっぱり、お金があるってのは幸せってことだよね、それでも文句があるんだからねェ、不思議だよねェ」
「貧乏でも一生連れ添える人が側にいるのが一番いいのよ」とわかった様な事を言う。
「それにしてもお兄さんお金持ちね。何をしてるの?」
「設計士。自分で好きな家を建ててそれを売るの。兄のデザインは売れるのよ。待っている人が結構いるの、この家ももう売れたの」
 私の知らない世界の話である。
 夕方になると私達は慣れた手つきで庭にテントを張った。家のベットよりずっと気持がよい。テントの横で夜風に吹かれて空を見る。少しずつ現れてくる星を見ながら、月を見ながら二人でいつものように言葉遊びをした。
*一番幸せな事は?「愛する人の傍にいる事」「自由な時間」「言いたい事がいえること」「食べても太らない」
*一番不幸な事は? 「イヤな奴の傍にいる事」「年取ってお金がないこと」「水を飲んでも太ること」
「年老いてくる…健康がない」…イヤダイヤダ
*一番びっくりする事は? 「鏡で自分の姿を見たとき」
*一番腹の立つときは? 「アテにならない人だとわかったとき」
*一番悔しい事は? 「自分に何の才能もないことがわかったとき」
*一番悲しい時は? 「死という別れ」
*ふて腐れることは? 「昨日食べた物が全部腹周りにくっついた時」
*いやな男とは? 「きたないケチ」
*よい男とは? 「別れ際に余情を残す」
*恋人との別れは? 「脱皮」
*甘いものは? 「恋」
*恋いは胸ふさぐ―――胸ふさぐは、残酷シーン―――残酷シーンはみたくない、知りたくない。あー寝よう寝よう。
 パラチの夜は静かに更けていった。満天の星を見ながら言いたいことを言いあって、そしてテントのなかにもぐりこんだ。
 朝が来てきのう目に付いた品の値段をおそるおそる聞いた。お兄さんの骨董品は無知でこんなにやすいのか、それとも愛をなくした今は一日も早く処分したいためか、私の想像していた半分の値段だった。思わず私は数点買った。ガレーの花びん、一八世紀のタイル、マイセンの皿、どれも確実にすぐに売れる品だ。これ以上は残念ながら私の金庫は空っぽ。
 ルンルン気分で鼻歌がでる。お兄さんがとんでもなく良い人におもえてくる。帰り際、浮かれ気分で思わず聞いてしまった。
「あなたのお兄さん、こんど離婚するのいつ頃だろうな。そのときは、また知らせてね」
…あ・ごめん。ごめん。ホントにごめん。
           (二〇一二年)


勾玉のけむり

 骨董屋は忙しい。
 電話一本で商品を問屋に注文する訳にはいかない。品物を売りたい人があれば、すぐその場所に行ってこの目で見、買うかどうかをその場で決めて、値段の交渉をして、現金を払って梱包して持って帰る。休日と言えど他州にも、そして外国にも行く。決断力がいるし、ものすごく神経を使うが、それ以上に体力が物を言う仕事である。

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