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パ国大統領選で「マリト」当選=初の女性大統領も誕生か?=パラグァイ在住 坂本邦雄

ストロエスネル長期独裁政権以降の歴代大統領(ウィキペディア)

ストロエスネル長期独裁政権以降の歴代大統領(ウィキペディア)

 4月22日(日)には、1989年のストロエスネル長期独裁政権崩壊後、7回目に当たる全国総選挙が一斉に行われた。即日投開票の結果、赤党コロラド反体制派のマリオ・アブド・ベニテス氏(Mario Abdo Benitez=愛称「マリト」)が、「勝利の同盟」のエフライン・アレグレ氏(Efrain Alegre)リベラル青党首を、デモクラシー体制下では初めての3%余りの僅差で破り、歴代合憲第57代目の大統領に当選した。
 就任は憲法の規定により、8月15日。2023年までカルテスに継ぐ新政権が発足する。
 開票当初、民間調査機関の出口調査では、約10~15%強の得票を保ったマリトだった。ところが、選挙が進むに連れて、徐々にエフラインに攻め上げられ、夜になって票読みが99%程に至った頃には、46・44%対42・74%と言う僅差の接戦になった。
 これは1989年来、民主体制下において守られて来た自由投票によるもので、当時、赤党コロラドは、青党リベラルと国民会議党・Encuentro Nacionalの連合勢に、53・89%対42・6%の優位な情勢を維持していた。
 我が国の主要政治団体のコロラド党は、2003年は青党リベラル単独勢力に、37・14%対23・95%と優勢だった。だが、5年後には「革新の愛国同盟党」に41%対31%の差で歴史的敗北を喫し、F・ルーゴ元司教に政権を譲った。
 そして2013年には、オラシオ・カルテスの采配の下に、青党や左派3党を含む連合勢力の36・92%に対して、赤党は45・83%の得票をもって再び政権に返り咲いた。
 今回の全国総選挙で見られた特徴には、勝利の得票率が僅差であった以外に、各立候補者それぞれの余り変わり映えしない貧弱な施政マニフェスト内容に飽き飽きした有権者が表した「失望」がある。正に無効7万1821票及び、6万2052票の白票の数字が雄弁に物語っている。
 ところで最高選挙法廷は、野党派から有り得る不満の申し出に先駆けて、夜半21時には、記者会見を招集しマリトの勝利、当選を宣言し、早々と引き上げた。
 なお、この度の総選挙で、全国17県中の13県の知事や自治体の多くの市町村や議会を赤党員が占める等の成果もあった。
 問題は、次期政権での立法府の議員構成図の色分けがいかようになるかで、行政府の統治力が左右される訳で、マリトの行政治手腕が問われる処だ。
 ついでに触れれば、カルテス大統領は、憲法に従い、退職後は発言権はあるが投票権がない終身名誉上院議員に自動的に就任する事になっていた。
 しかしこれを否み、違憲ながら正参議員に立候補して、今回当選した同氏。大統領を予め辞任しないと、次期国会(7月に開会)で正参議員に就任・宣誓が出来ないので、近々大統領を辞職する話がある。
 すると、既定の大統領継承順位で、アファラ副大統領が昇格して後任大統領になるが、同副大統領は政界(国会議員)進出で既に辞職しているので、カルテスがお気に入りの、プチェタ裁判官(女性)をその後釜に持って来る運びにある。
 それには、プチェタ女史は先ず裁判官の職を辞めなければならないが、もしこの動き(カルテス構想)が実現すれば、 マリトが8月に大統領に就任するまでの間、パラグァイで初めての女性大統領が誕生する事になる。ややっこしい話だ。
 なお、マリト新政権が期待される大きな仕事は、腐敗して、かつ独立性を欠く司法府の大改革を成就する事である。
 つまり、憲法に基づく三権分立の一つである。
 ストロエスネル専制政治から、民主政体へ移行後の現行憲法(1992年6月発布)は、これまでに実際に使って見て、議員先生達も色々な法的欠陥があるのに気付いているに違いない。
 例えば、度々議論になる大統領再選の絶対禁止の問題や、今回の総選挙で投票の僅差で敗れた野党派の不満等について、改善の方法はあるはずだ。
 我が憲法では、一点の差でも、勝った事には変わりはない。
 そのような矛盾を避けるにはチリのごとく、大統領の二期再選は禁じ、投票の僅少の差で本質的に勝敗が疑問視される場合は、バリョタージェ(再決選投票)の制度を明文化し、憲法に規定する事で公平に解決されるのでは?と思われる。

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