ホーム | コラム | 特別寄稿 | 特別寄稿=単身ブラジル駐在員コロナ体験記=「このまま死んでしまうかも…」=家族と咳こらえてビデオ通話

特別寄稿=単身ブラジル駐在員コロナ体験記=「このまま死んでしまうかも…」=家族と咳こらえてビデオ通話

病室のベッドから仰ぎみる点滴

 私は、最近日本からサンパウロ市に単身赴任してきた新米駐在員だが、今年3月中旬に新型コロナウイルスに罹り、入院した。
 当初、悪寒を感じ、検温したところ体温は37・3度。念のためPCR検査を受けたところ、『陽性』であった。それでも体調は悪くなく「しばらく自宅で療養していれば治るだろう」くらいに軽く考えていた。
 ところが、発症から1週間ほどした頃、咳き込みが酷くなり発熱した。38・5度だった。関節の痛みも強くなった。少し間を空けてからの容体悪化が新型コロナウイルスの特徴だそうだ。
 病院で検査を受けたところ、軽い肺炎症状がみられた。点滴治療で体調が良くなったので、その日は帰宅したが、翌日以降の体調が芳しくない。発熱は無いが、少しでも動くと激しい咳が出て、倦怠感、関節痛、目眩が酷かった。
 発症から約2週間。体調は一向に良くならず「このまま死んでしまうかも…。無事に家族の待つ日本に帰れるだろうか」と不安は募った。日本の家族に相談することも「心配をさせてはいけない」という思いからはばかられた。
 そうした中、買い物に行けない私に食料品の差し入れをしてくれていた職場の同僚が、容態の悪さを案じて、親身にも、入院できる病院探しを手伝ってくれた。入院先を探し始めて数日、運良く日系のサンタクルス病院への入院が決まった。
 3月後半は、大サンパウロ市都市圏の集中治療室占有率が91%にも達し、事実上の医療崩壊状態だと報道されていた時期だ。日本語会話ができる日系病院は病床数が少なく、いつでも入院できる訳ではない。やはり重症者用の集中治療室は一杯
 ポルトガル語が未熟な私は、現地病院への入院を心細く思っなようだった。そんな状況だから、入院許可の報せを受けたとき、内心「これで生きて帰れる」と思ったのを覚えている。

入院中の食事は日本食。弱っている時には特にありがたい

 実はその時、家族には「コロナで入院することになったけど、念のためだから心配しないで」としか伝えなかった。ビデオ通話中の咳込みをこらえるのが辛かった。
 それでも家族は、報道されるブラジルの医療事情から「空きベッドが無いから床に寝かせられてしまうんでしょう?」などと心配した。
 しかし、同病院の入院環境は、実に素晴らしいものだった。まず日系病院だけあって日本語によるアテンドがあり、食事も日本食で精神的に救われた。治療態勢も何ら問題なく、1週間ほどの入院で、体調はずいぶん回復した。とりわけ、当時はまだ2回目のワクチン接種を終えていないスタッフの方が多いにもかかわらず、文字通り懸命の姿勢で世話をしてくださったことには心から感謝したい。
 さて、今回は職場や病院の方々に助けられ、結果として大過なかったが、「もっと備えておくべきだった」という思いは強くある。
 まず単身者の場合、自宅療養が長引いたときのために、保存の効く食料の買い置きをしておくこと。急な様態悪化に備えて常に携帯電話を枕元に置いて、世話を頼める知人に連絡できるようにしておくこと。保険契約書や下着、携帯電話の充電器などをまとめた入院セットを用意しておくことをお勧めする。入院先候補の下調べは言わずもがなだ。
 ある意味、家族で駐在している方達はより注意が必要だ。今回は私1人の入院手配だったので空き病室があったが、もし家庭内感染が起きて、一家全員の入院先を探すとなったら一大事だっただろう。
 退院してしばらくたった現在も、後遺症の倦怠感は続いている。ブラジル初心者の皆様、コロナにはどうぞお気を付けください。

image_print

こちらの記事もどうぞ