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西森議員「もはやストではない」=農業被害額は150億レ以上=二宮氏「投資避ける決定打ではない」

2016年10月、東京で日伯首脳会談に臨んだ両政府関係者(左から3人目が西森下議、本人提供)

2016年10月、東京で日伯首脳会談に臨んだ両政府関係者(左から3人目が西森下議、本人提供)

 長引くトラック業者のストの影響を受けて、パラナ州農業関係者を基盤とする西森ルイス連邦下議(PR)と、進出企業に詳しいJETROサンパウロ事務所次長の二宮康史さんに意見を聞いた。なかでも西森下議は「国の根幹である食糧供給に支障が生じ、国民生活にも悪影響が及んでいる。トラック業界とは何ら関係のない第三者に対して損害を与えるのはおかしな話。デモをする側も、それが与える影響を考えなくていけない」と憤りを顕わにした。

 西森下議によれば、農業団体が試算したストによる農業被害の総額は150億レアル(4500億円)に上る見込み。「穀物類以外の農業は大打撃を被っている」と厳しい状況を指摘した。ロンドリーナ、ウライなど北パラナで予定されていた農産物展など、パラナ州日系社会の各種行事も相次いで延期を決定。「必要な品物も届かず、人も集らないため、延期を余儀なくされている」という。
 ストについて西森下議は「国内のインフレ上昇と世界的な石油価格の高騰を受け、ペトロブラスがものすごい値段の上げかたをした。それに対し、トラック業者の不満がついに爆発したのも分かる」と一定の理解を示した。
 ただし「政府とトラック業者の代表者が合意した後もストが続いているのはおかしい。トラック業者は働きたくなっているのに、右翼や左翼の過激派が入り込んでおかしな方向にいっている。もはやトラック業者のストではない」と見ている。
 今後の見通しを聞くと「どのように終息するのかは予測がつかない。政治的な思惑が働いており、難しい問題だ。円満に解決するのが一番よい。どこかで折り合いをつけなけば」と語った。
 一方、ジェトロの二宮康史さんは「ブラジルは輸送の6割以上をトラックに依存していて、今回は偏った輸送手段のせいで経済全体に影響した」とし、「特に国内輸送をトラックに頼らざるをえない自動車メーカーは早期に生産を停止したし、鉄鋼、紙パルプ、機械産業への影響は大きい」と解説した。
 日本企業については「多かれ少なかれ各社とも損害が出ているようだ。今回のことを受けて物流を鉄道や水運に分散する企業も出てくるかもしれない」と推測した。
 「日本企業がブラジル進出を思いとどまる要因にストがなるのでは」との問いに対し、「より中長期的に判断するはずで、ストだけが投資を避ける決定打にはならない」との考えを示した。
 「今年は10月に大統領選挙があったり、為替が大きく変動するなど、この時期はもともと企業は進出に前向きではないと思われる。ブラジルを進出先として検討するとき、市場の成長余地や豊富な資源に着目することが多く、物流のリスクが主に企業の判断に影響するわけではない」との見方を示した。

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