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「ボヘミアン・ラプソディ」とブラジル

ボヘミアン・ラプソディのポスター

ボヘミアン・ラプソディのポスター

 今、世界で「話題になっていない国はない」と思えるほど大ヒットしている映画が「ボヘミアン・ラプソディ」。英国の世界的任期ロックバンド、クイーンの伝記映画だ▼なんでも日本では、公開から5週間が過ぎても、普通、1週ごとに落ちるのが当たり前の動員が、同じかそれ以上のペースで推移するという異常事態が起き、テレビの一般のニュースでも頻繁に取り扱われるほどの「一大現象」になっているという。クイーンの伝説のヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーをコンサートでリアルタイム経験した人が、どんなに若くてももう40代後半、平均で50、60代になっていることを考えると、これはすごいこと。その世代だけで、そこまでの事態が起きるわけもなく、若い層を取り込んでのブームであろう▼日本でこのようなブームになっているのは、「世界に先駆けてクイーン人気に火がついたのが日本」というのが定説になっていて、そのことが改めて思い出されたからだと一般には見られており、大ファンのコラム子もそう見ている▼「では、ブラジルではどうか?」だが、コラム子が見る限りは盛り上がっていたように思う。日本とは異なり、「人気に火がついた」のは決して早くはなかったブラジルではあるが、クイーンはブラジルのロック産業にとって非常に重要な意味を持つバンドと言えるからだ。それを示す大きなことがふたつある。ひとつは1981年2月、サンパウロ市モルンビ・スタジアムなどを中心に行なわれた初のブラジルツアーだ。このときのクイーンの南米ツアーは、まだ欧米の人気ロック・アーティストが南米で公演を行なうことが希少だった時代に、大規模に行なわれた画期的なもので、世界的に話題となった。欧米のロック産業が南米をコンサート・マーケットとして本気に考え始めたのはこの時期だ。クイーン自身もその重要性がわかっていてか、今回の映画のサウンドトラックには、このモルンビでのコンサートの模様が一部収められている▼そして、その81年の公演の大成功が理由で実現したと言っても過言ではない、85年1月の「ロック・イン・リオ」。ブラジルで最初の国際的ロック・フェスティバルにして、軍事政権終了後のリオに、10日間の開催で連日若者たちが10万人以上も集まったという、伝説の記録が残っている。とりわけクイーンがトリで出演した2日間は、それぞれ30万人と25万人を集めたという、信じられない記録も残している▼さらに言えば、今回の映画のラストの実に21分も割いたことで最も話題を呼んだ、世紀のコンサート、「ライブエイド」の再現シーン。これもロック・イン・リオからわずか半年での出来事だ。そして「ロック・イン・リオ」でのライブも、クイーン・ファンの間では世界的にベストなもののひとつとして有名だから、やはり大きな恩恵を受けたと言える▼そういうこともあり、ブラジルでも公開して数週は全国の興行成績で1位だったし、「映画館内で観客が合唱」という、きわめてブラジルらしいことが起きたところもあった。1本あたりの公開期間が短いブラジルの映画の中では公開1カ月以上立っても、1日に3回ほどの上映もやっている▼だが、その一方で残念なことも起こっている。それは、ゲイで有名なフレディ・マーキュリーが劇中で同性愛的行為をとった際、映画館によってブーイングが起こったところがあったというのだ。折りしも今作の公開は、同性愛嫌悪者で知られる極右政治家ジャイール・ボウソナロ氏が大統領選に当選した直後。ちょっとしたボウソナロ・ブームで同氏の真似を気取った人たちの挑発的な行為だろう。ただ、クイーンを愛していることで有名な国で、フレディがゲイであることを今さら知った人が多かったとは考えにくく、それが嫌なら最初から見に行かなければいいだけのこと。そう思うとやはり情けない。(陽)

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