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援協=認知症サポーター養成講座=「初期のうちに専門医に相談を」

講座の最後に行われた認知症○×クイズで「認知症にはアルツハイマー病だけでなく色々な原因疾患がある」の問いに対して○と答える参加者

講座の最後に行われた認知症○×クイズで「認知症にはアルツハイマー病だけでなく色々な原因疾患がある」の問いに対して○と答える参加者

 サンパウロ日伯援護協会福祉部(マリウザ・春美・長尾部長)は2月19日、サンパウロ市リベルダーデ区の同協会ビル5階神内ホールで認知症サポーター養成講座を実施した。日系高齢者を中心に140人が参加し、認知症患者に対する理解を深めた。
 同講座は、日本発の地域福祉実現施策の一つ。2時間で認知症患者と家族が抱える生活上の困難を理解し、地域住民がどんな助け方を出来るか伝えるもの。健康に関する定期講演会の一環として行われ、同講座講師資格を持つJICAシニアボランティアの長谷川美津子さんが講師を務めた。
 認知症とは、何らかの病気によって脳の神経細胞が破壊され、認知機能が低下させられた状態のことを指す。脳の萎縮によって記憶力の低下や人格の変貌が起きるアルツハイマー型認知症が有名だが、脳内の血流不全によって脳神経が壊死する脳血管性認知症や脳内にレビー小体という物質が出来、脳神経が死んでしまうレビー小体型認知症も存在し、それぞれに人格への影響や対処法が異なる。
 脳血管性認知症の場合、早期に原因となる血種を摘出できれば、認知機能の回復も期待できるため、原因疾患の特定は非常に重要となる。長谷川講師は「治る認知症もあるので、初期症状のうちに専門医に相談して」と勧める。
 認知症と物忘れの違いを簡単に言えば、昨日食べた「もの」を思い出せないのが物忘れで、昨日食事をした「こと」を覚えていないのが認知症だという。
 長谷川講師は「認知症患者は自身の記憶が失われていく悲しみや、誰と話しているのか、ここが何処であるかが急にわからなくなる不安を抱えながら生活している。話が通じないからといって遠ざけるのではなく、その心情に寄り添ってあげて欲しい」と語った。
 認知症になると意志の疎通が困難になるため、予め家族と自身が認知症になったときにどう対応して欲しいか、延命治療や葬儀に対する希望、財産の整理について家族としっかり話しあっておくことも重要と述べた。
 参加した前田エレーナさん(80)は「認知症の仕組みや認知症患者の抱える不安や悲しさを理解することができた。84歳の姉の介護をしているので、長谷川先生の言葉の一つ一つが心に沁みた。援協に感謝したい」と語った。
 3月20日には『転倒防止と薬の服用に関する注意点』をテーマに講演会が行われる。時間は午前9時から。場所は同協会ビルに5階神内ホール。参加には予約が必要のため、同福祉部(電話=11・3274・6518)にまで連絡すること。


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 ブラジルは認知症サポーター数が世界で3番目に多いことが全国キャラバン・メイト連絡協議会発行のレポート『「認知症サポーターキャラバン」実施状況 平成30年9月30日現在』でわかった。同レポートによれば、ブラジルには312人の認知症サポーターが存在する。集計はサポーター養成講座開催申請のあった11カ国が対象。1位は日本で1005万9227人。2位がドイツで771人だ。講座は長谷川さんが中心となって行われており、長谷川さんの任期が終わる6月以降の開催見通しは不明だ。日本発の取り組みでブラジルが認知症患者に優しい国になったとなれば、その誉れは否無く高い。関係機関にはぜひ後継策を検討して欲しいところだ。