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連載小説=臣民=――正輝、バンザイ――=保久原淳次ジョージ・原作=中田みちよ・古川恵子共訳= (79)

 頭は肝臓と同じように栄養価の高いスープを作るために自分に確保した。頭はハヤトウリのスープではなくケールのスープを作るだしにするためだ。盛一も正輝もケールを日常食としていつも畑に絶やさなかった。
 腿肉とご飯の他に、誕生祝に沖縄特有の菓子がふるまわれた。サアター アンダージーという菓子で、これは砂糖をまぶした丸いドーナッツのようなもので、タバチンガではすでに本物にちかい菓子が作られていた。
 ブラジルの田舎で「ボリニョ・デ・シューバ」とか「ボリニョ・テイモゾ」とかよばれる揚げ菓子だ。小麦粉、油、玉子、砂糖を混ぜ、2本のスプーンを使って丸めて熱した油で揚げると、上に向いた部分が割れて、軽くなるため、ひっくり返そうとしても、下向きにならない。だからテイモゾ、つまり、強情っぱりと命名されたのだ。彼らがワー ヌ シシとよぶ豚肉とアンダージーは沖縄人二世のブラジル人マサユキの誕生に、いかにもウチナアらしい雰囲気をもたらした。
 こんなとき飲む喉を焼くピンガはまるで、沖縄産の焼酎「泡盛」を飲むような心地にした。ご馳走はジャカランダのテーブルの上に並べられ、そのテーブルを囲んで正輝と房子の長男の誕生祝いは最高潮に達していた。
 正輝と房子は平穏な日々を送っていた。二人は棉を栽培し、そのかたわら、家の小さな畑に野菜を植え、日々の食材としていた。4ヵ月になると、息子は母の背中に負われ、棉畑に連れていかれた。いつも眠っていたが、腹がすくと泣いた。すると、母は紐をとき、背中から胸のほうにずりおろし、乳を与えた。授乳は割合時間がかかったが、わが子を胸にだけるのは、またとない幸せなときだった。それだけでなく、苛酷な農作業や、背負う赤子の体重から解放され体を休めることができる。
 ちょうどそのころ、花城村でいちばん親しくしていた姪のウサグワァーがタバチンガを訪れた。房子のいちばん上の姉の娘で、家族から叔母と同じ愛称で呼ばれていて、いつもいっしょに遊んだ幼馴染だ。あのころと少しも変わらず美しかった。まだ、沖縄にいるとき、同じ花城の近い親類の嘉数成人と結婚した。ブラジルに移住するため、彼女と結婚したのだ。
 彼らは沖縄より恵まれた状況にあるブラジルの親類たち、つまり叔母の房子、今はパラグァス・パウリスタに住む叔父の嘉数成人、アルタ・パウリスタ地方のルセリアに住む国保下と結婚して、今は大家族の一員である姉のカマー、これらの人たちから情報を得て、こちらにやってきたのだ。全員が棉の栽培をしている。嘉数成人、ウサー夫婦はタバチンガの房子に会ってからルセリアに向うところだった。ウサアグワァーは姉のカマーの近くに住むつもりだ。姉がそばにいれば何かと助けてもらえると思っているからだ。
 房子にとっても嬉しい再会だった。沖縄を出て5、6年は経っている。その間、情報交換はなかったのだ。ウサアグワァーは会うや息もつかずにしゃべりまくった。家族の近況を伝え、
「母さんはとても元気。もうすぐ、ブラジルにくるわ」といった。
 ブラジルに暮らす兄弟がもう一人増えるわけだ。ハワイで生まれ沖縄で教育を受けた甥たちは生まれ故郷に帰ったという。ウサアグワァーの情報はとどまるところがない。姉カマアの息子、甥のエイゾウは勉強のため沖縄に行ったが、成績もよく、親類の農作業を手伝っていること。房子のほかの兄弟や甥たちは花城にいて、海外に出る意志はないこと。ただ、できるだけ早く遊びにきてほしいと願っていること。なつかしがっていると房子に伝えた。

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