ホーム | 特集 | 日本移民の日2019年 | 【日本移民の日2019】座談会=ざっくばらんに行こう!=どうなるボウソナロ政権の行方?=ネットで民意を操る大統領登場=SNS民主主義のいびつさを暴く=デジタルがどこまでリアルを動かすか?

【日本移民の日2019】座談会=ざっくばらんに行こう!=どうなるボウソナロ政権の行方?=ネットで民意を操る大統領登場=SNS民主主義のいびつさを暴く=デジタルがどこまでリアルを動かすか?

ボウソナロのフェイスブック

ボウソナロのフェイスブック

【深沢】政権発足からまだ半年も経っていないけど、どうかな? 予想通りだったかな?
【沢田】今の状況を予想できた人はいないでしょう。そんなに高い期待をしていたわけじゃないけど、ここまでとは・・・。
【深沢】もうちょっと、仕事をして欲しかったよね。だいたい、ここまで議会との関係がこじれるとは思わなかったね。
【沢田】長年政治家をやってきたのに、こんなにアルチクラソン(議会での多数派工作)ができないとは思いませんでした。
【深沢】ボウソナロ所属政党幹部のグスタヴォ・ベビアーノを総務室長官に据えて、議会との交渉をさせるはずだったのに、2月であっさり辞めさせちゃって・・・。
【井戸】その理由も、「自分の息子と喧嘩したから」ですよ。政府は世襲制の王朝じゃないんですけどね。
【深沢】ベビアーノがいれば議会との関係も上手くいっていたかもしれないのに、さっさと辞めさせて、その後、議会との橋渡し役がいないまま、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)にオンブに抱っこの状態。
【鈴木】そのくせ、64歳のボウロナロが、16歳も若いマイア(48歳)を「古い体質の政治家」呼ばわりして怒らせてます。
【深沢】ツイッターやフェイスブックの生中継でブラジル国民というか、自分の信者には直接語りかけるけど、目の前にいる連邦議会には語らない、という姿勢だね。なんだろうね、このデジタル民主主義というか、「SNS民主主義」というか。
【井戸】民主主義の基本である三権(立法、司法、行政)分立はどこへ行っちゃったんでしょう。
【鈴木】民主主義のありかたとして、極めて不思議な状態です。

常時1700万人からフォローされる大統領

ボウソナロのツイッター

ボウソナロのツイッター

【井戸】大統領令や暫定令が多いのもそのせいですかね? でも、その後の議会の承認が得られないという事態が頻発しています。
【鈴木】5月末から6月にかけて起きていたのは、まさにそれですよね。就任したばかりの年初に立て続けに出した暫定令が、議会の承認期限を迎えてしまい、このままでは暫定令が無効化される瀬戸際だった。
【深沢】このまま国がどんな風になっていくのか、不安定なままもう6月だね。絶対にやらなきゃいけないはずの社会保障制度改革も、まあ、最後は通るんだろうけどどんな形に落ち着くか、見えないね。
【沢田】政府案のままで通るか分からない。
【深沢】そんな中、5月26日はボウソナロ大統領支持のデモが起きて、しかも、思ったより動員数も多かったんだよね。つまり、「国民からの支持」という彼の頼みの綱は切れていないんだよね。
【沢田】5・26デモがガラガラ、スカスカだったら、超早期退陣もありえましたね。
【深沢】まだ国民は見放していない。「悪いのはボウソナロをいじめる議会」だと信じている人も一定数いると。
【沢田】そうは言っても、まだ半年ですよ。
【井戸】今は政権末期じゃなくて、政権初期です。もっと上手い人がやっていたら、マスコミも国民も、議会も大統領にまだまだベッタリでもおかしくない時期です。
【深沢】見放すのはさすがに早すぎかとは思うけど。
【井戸】一部発言に問題はありながらも、ボウソナロを強く支持する人はいた。選挙にも一応勝った。その勢いが失われたわけではないことを5・26デモは証明したわけですね。

演説するボウソナロ大統領(Fernando Frazão/Agência Brasil)

演説するボウソナロ大統領(Fernando Frazão/Agência Brasil)

【深沢】ボウソナロのフェイスブックの登録者は1千万人超え、ツイッターは440万人超え、ユーチューブは252万人超え。単純に合計したら約1700万人! ブラジルの有権者は1億4730万人だから、有権者の1割以上をボウソナロが常に従えている状態なんだよね。
 テレビや新聞などの既成のメディアを通さずに、それだけの国民に直接に語りかけられるという訴求力はすごい。
 彼がデモを呼びかけて、計1700万人の1%が行動を起こしただけで17万人、もし機運が盛り上がって10%が反応したら、なんと170万人デモができる。
 日本で一番盛り上がった60年安保闘争の国会前デモでも、主催者発表で33万人、警視庁発表で13万人だから、十分にすごい数字。

スマホ片手に議会を生中継する議員達

【沢田】ただし、その登録者数には相当数の幽霊登録者がかなり混ざっているという報道があったよね。たしかに登録者は多いんだろうけど、数字自体は当てに出来ない。
【深沢】そうそう。この間も日本のテレビ番組でやっていたけど、ツイッターのフォロアー(登録者)って、何万人を数万円で買えるんだってね。日本でそれだったら、ブラジルはもっと安くて大量にできるだろうね、多分。
【鈴木】でもその数字が一人歩きしてしまうから、目の前にいる連邦議員と政治交渉をしないで、何か文句があればフェイスブックとかSNSを通して信者に語りかけ、ネットを通して反対派議員に圧力をかけようとする。
【深沢】そうなんですよね。SNS頼りはボウソナロだけでなくて、最近「バンカーダ・デ・セルフィ」(自撮り議員団)という言葉をよく聞きますよね。連邦議会とか、専門委員会のまっ最中に、スマホ片手に自撮りで生中継して、支持者に「こんなにお仕事してます!」ってアピールをするんだそうです。
【鈴木】大事な会議の真っ最中のはずなのに、会議そっちのけで自分の選挙活動している―みたいに見えますよね。議会内で隣にいる他党議員とは政治交渉しないで、支持者とだけSNSとつながっているみたいな感じで、なんか不安定なものを感じますよね。
【深沢】よく言えば、新しい形の民主主義が動き出そうとしているのかもしれませんが・・・。三権広場をはさんでお隣にあるはずの行政府と立法府の、心理的な距離が遠い感じですよね。逆にSNS越しの方が近いというか。
 基本的な構図としては、行政権の長である大統領が国民とSNSで直接繋がって、他の二つの権力を極力無視して政治を進めていこうとしている雰囲気が強いよね。
 ちなみにトランプ米大統領のフェイスブックの登録者は2540万人ぐらい。ボウソナロの2・5倍もある。安倍晋三首相のフェイスブックファンページはたった4万8千。この辺のブラジルにおける民主主義のデジタル度はすごいよね。


5・15反ボウソナロ・デモが潮の変わり目

政策を発表するボウソナロ大統領(Marcelo Camargo/Agência Brasil)

政策を発表するボウソナロ大統領(Marcelo Camargo/Agência Brasil)

【沢田】でも、親大統領派デモを報じたインターネットの記事に、読者が書き込んだコメントを見ると、そこでの支持派の勢いは、選挙の時より大分落ちているよ。
【深沢】やっぱり、教育関連予算削減を発表したことで起きた、5月15日の反ボウソナロ・デモが大きく盛り上がったことが潮目だったね。PT(労働者党)を中心とした反ボウソナロ勢力に、まだまだ力は健在ってことを見せ付けられて、「負けてなるか」でやったのが26日のボウソナロ擁護デモ。
【鈴木】「議会は社会保障制度改革や犯罪防止法の成立を邪魔するな」っていう、まともな主張の人もいましたが。
【深沢】一番過激な主張の人は、「議会も最高裁も閉鎖してしまえ!」だったね。議会も国民によって民主的に選ばれた人たちの集まりなのに、国民がデモで「議会閉鎖」という圧力をかけるのは民主主義的じゃないよね。
 そんなことを言ったら、行き着く先は独裁政治しかない。デモで最高裁まで攻撃するというのは、「国民が独裁を求めている」っていう矛盾した構図になる。これは決して良い事ではない。
【沢田】最悪ですよ。
【井戸】そこまでいっているのはまだごく少数だっていうのがギリギリ救いですけどね。
【深沢】そんな主張をする人が多数派になることは、さすがにないと思うけれど、ボウソナロ支持が弱くなればなるほど、そうした人たちは過激なことを言うようになる。
【井戸】「リーダーに強権を! その方が議会でゴチャゴチャやってるよりずっと良い!」ですか? 恐ろしいなあ。
【沢田】5月26日の親ボウソナロ・デモではまだギリギリ、「ボウソナロ、頼りないけれど頑張れ!」みたいな空気も感じたけれど、これから失政が続くとドンドン“危ない人たち”が増えてしまうかも。

景気浮揚策の前段階ですったもんだが続く現状

景気浮揚策が打ち出される以前の状態で、足踏みするブラジル経済(Marcello Casal Jr./Agência Brasil)

景気浮揚策が打ち出される以前の状態で、足踏みするブラジル経済(Marcello Casal Jr./Agência Brasil)

【深沢】そうならないためにも、鍵は経済だと思うんだ。経済が悪くなればなるほど、ボウソナロの支持も落ちる。
【井戸】攻撃的になる人や、ひねくれたりする人、「移民が悪い! サヨクが悪い!」と極端な考えに傾く人も増えてしまいます。
【深沢】今議論されている社会保障制度改革だって、「経済を活性化させましょう」というより、「経済活性化のための地盤を整えましょう」という政策。税制改革だってそう。投資を受け入れるための地盤づくり。それらが出来たあとに初めて、「国外からの投資を呼び込もう」みたいな本格的な景気浮揚政策が打てる。

労働手帳に書き込まれる雇用が増えない現実(Marcello Casal/Agência Brasil)

労働手帳に書き込まれる雇用が増えない現実(Marcello Casal/Agência Brasil)

【鈴木】つまり、経済を活性化させる云々より、もっと前の段階ですったもんだしているわけですよね。
【深沢】去年、選挙が終わった頃、ゲデスは「社会保障制度改革は19年の上半期中にできる」なんて超楽観的な見方をしていたのに、今では大方の連邦議員は「早くて7月」「いや9月かも」なんて言っている始末。そんな状況に呆れ果てた市場も国民も、新政権からどんどん離れていってしまっている。

不自然な政権側のデモ

【鈴木】5月26日デモの参加者の意見をフォーリャ紙なんかが載せていましたが、本当に「ボウソナロ大統領を応援しよう」とのモチベーションでやっていた人たちは限られるのかなと思います。ただの不満の発散、不満の捌け口になっていた人たちも混じっていました。
 「議会、最高裁閉鎖」なんて叫ぶ一部の人々と同じにされるのは困ると、ボウソナロが「自分は参加しない」と公言していたことも、あまり人が集まらなかったことの言い訳になりますね。本当なら「社会保障改革や犯罪防止法の手を緩めるな!」というテーマで、もっと盛り上がらなくてはいけなかったんじゃないかなとも思います。
【深沢】そもそも、現政権側に立ったデモっていうのが…。
【鈴木】不自然ですよね。
【深沢】そう、まるで、ベネズエラのチャベス、マドゥーロみたいです。
【鈴木】本来なら、権力を握っている為政者側のデモは無いはずですよね。
【深沢】なんか伯国らしくないというか、左翼政権的な、不思議な感じがします。する必要もなかったのに、あえて街頭に出て、勢力を見せ付けるみたいな。それがSNS民主主義なんだろうけど。

PT支持者と同じくらい狂信的なボウソナロ信者

【鈴木】ボウソナロ大統領と、同じ社会自由党(PSL)で、一時は「副大統領候補に」なんて声もあがっていたジャナイーナ・パスコアル聖州議も言いました。「為政者側が自分たちを応援するためのデモを呼びかけるなんてあり得ない」って。
【深沢】その前にも、彼女は「PTの支持者がファナチコ(常軌を逸するほど熱狂的)なのと同じくらい、ボウソナロ大統領の支持者たちもファナチコだ」と言っていたけど、上手いこというよね。
 確かに右と左が違うだけ。政治という振り子が一番左から一番右に振れちゃったけど、政治特性は実は一緒―みたいな。やっぱり、もうちょっと中間で収まってくれるほうが収まりが良いはずなんですが…。
【鈴木】この傾向は、ブラジルだけでなく世界的なものですよね。アメリカのトランプしかり。
【深沢】そうですよね。さらに今はインターネットのSNSでこうした意見がドンドン過激化していく傾向にあるよね。
【井戸】意見の書き込みやら、それへの賛同、それへの反対を書けるようになって、仲間内でドンドン意見が先鋭化していくし、意見が合わない人はボロクソに攻撃するってことですよね。生身で相対していないから、過激になっちゃうんですよね。
【深沢】そんなSNS民主主義の流れに、誰も歯止めをかけられない。当然、ブラジルも出来ないから、中道に軟着陸できない。どうしたらいいんだろうな。

モロの犯罪防止法には期待

【深沢】しかも、恐ろしいことに、今年と来年は、世界の経済情勢は決して伯国に追い風じゃないよね。
【井戸】米中貿易戦争ですよね。中国市場にアメリカが持っていた食糧のシェアを一時的に伯国が奪うかもしれませんが。
【深沢】でも、伯国の内需が増えない、むしろ下がっている中、国際的に景気が冷え込んだら、中国市場で得た小さな得もすぐにトータルではマイナスになってしまう。客観的に、良くなる要素があまりないよね。
【沢田】伯国中銀の観測も5月27日現在、13週連続で下方修正です。
【深沢】今年の初めはまだもうちょっと良かったはずなんだけど。
【井戸】そう、でもそれは実体経済じゃなくて、ボウソナロ新政権が自由主義経済政策をすすめるだろうから、伯国経済も良くなるだろうという期待値に過ぎませんでした。
【深沢】前のテメル大統領が、FGTS休眠口座の引き出し解禁や、国外不法資産の免罪措置(レパトリアソン)とか、手品師みたいなことをやってつないできたのに。今は誰がどうみても、「今年の景気回復は無理」って状態。「じゃあ、来年にはなんとか」って言っても、来年後半には統一地方選挙(5千以上ある市の市長と議会の選挙)だよね。
【沢田】投票日は9月か10月でしたよね。
【深沢】てことは、今年も9月を回っちゃったら、「選挙まであと1年」になる。そうなったら、政治家は票に繋がらない、不人気な政策に賛成出来ない。
【井戸】えっ? じゃあ社会保障制度改革は(涙)
【深沢】9月以降にまでずれ込んだら、成立が今以上にむずかしくなるようね。他の政策では、モロ法相が執心の犯罪防止政策は、国民の人気取りには良いけど、政治家の側が余り通したくないだろうね。
【井戸】5月26日デモでも、モロ法相の人気は高かったです。スーパーマンに似せた巨大風船人形まで現れました。
【深沢】社会保障改革より犯罪防止法を先にやったほうが、議会を通過していたかも。
【沢田】モロの犯罪防止法って、いまいち不明瞭なんだよな。中身の評判が凄く悪い。
【鈴木】その前に出されていたものの焼き直しという評価もあります。
【深沢】「前に出されたもの」だって、議会で成立していないわけだから、それが議会を通るだけでも犯罪捜査はやりやすくなるとは思うよ。
【井戸】例えば、カイシャ・ドイス(選挙の裏金)は、これまでただの文書偽造罪だったけど、別個の犯罪として位置づけるとか、2審判決有罪結審後は、上告手段をのこしていても、禁固刑の執行がはじまるとかが、ありますよね。悪い法案ではないはずなんですが、それを議会で認める立場の政治家たちは皆、“すねに傷”な方々。
【深沢】汚職に対して今よりも厳しくなるのは間違いない。政治家の犯罪のほとんどは汚職だから。そこがやりづらくなくのは、ある意味最大の政治改革なのかな? まあ、ちょっとやってみないとわからないですね。
【鈴木】その意味で痛いのはカイシャ・ドイスがらみの裁判は選挙裁判所扱いになってしまったことですよね。
【深沢】選挙裁判所にもしっかり予算も人員もつけなくてはいけませんよね。金融活動管理審議会(Coaf)と同じで。
 5月末の行革関連暫定令承認手続きの中で、最後、結局Coafが法務省じゃなく経済省所轄になってしまいました。
【井戸】これも結局、議員たちの力。
【深沢】Coafは、マネーロンダリングをバンバンとりしまるはずの組織ですが、経済省所轄になると、法務省とは別の優先課題(社会保障制度改革、税制改革、公社民営化問題)がありますから、Coafにあまり大きな予算も人も熱意も割けないでしょうね。その辺を政治家は良く知っているから、Coafを経済省にもっていったんでしょうね。

固まっている300票がどう動くかが鍵

【深沢】今後半年、年末までどんな展望が予想されるかな?
【沢田】いかに社会保障制度改革を通すかじゃないですか?
【深沢】それは最低限だよね。左派を除く連邦議会の皆さんは、口では「通す、通す」と言っているけれど「中身は“ちょっと”変えるね」って言っている。
【沢田】ここまでの流れを見ている限りでは、通るんじゃないですか?
【深沢】意味のある形で通って欲しいよね。
【井戸】政府案では、「むこう10年間での歳出削減規模1兆2千億レアル」ですが、いろんな思惑、支持母体とのしがらみがある政治家たちが、「この項目はダメ」「ここもダメ」とやっていく中で、歳出削減規模はどの辺に落ち着くのか?
【鈴木】8千億レアルって予想している金融機関もありますね。
【井戸】私が見た、最も悲観的な予測は4千億レアルでした。
【深沢】それによって後の経済復興プランが大きく変わる。
【井戸】根本的に、「社会保障改革なんて一切ダメ。歳出削減ゼロ」なんて主張する勢力も議会にはいます。まあ、名前を出すと労働者党(PT)、共産党、PSOLなんですけど、彼らが承認手続きを妨害する余地はまだまだ残っています。下院本会議採決に、上院憲政委員会、上院特別委員会、上院本会議。
【沢田】つまり、成立までの時間がおす可能性もあるわけだ。
【井戸】内容が骨抜きになるリスクと、時間がかかってしまうリスクがあります。
【深沢】社会保障改革ができずに、時間が経てばたつほど、ボウソナロ大統領の人気は落ちていくよね。
【井戸】今は「いつかは通してやる」って言っているセントロンも、ボウソナロと仲が悪くなれば、いつ「社会保障改革、何が何でも阻止!」になって時間稼ぎをしないとも限らない。
【深沢】その辺、野党とセントロンの利益が、思わぬところで一致しちゃってるんだよね。
【井戸】そうすると、政府の思惑と反対方向に下院300票!(定数513)ですよ。もう何回も起きています。
【深沢】もうちょっと集まれば、いつでも大統領をインピーチメントできる票数になる。大統領が下院でも多数派を握っているのが安定政権なんだけど、ボウソナロ政権の場合は、彼が所属するPSLの57票だけしか与党がない。目の前にいるのに政治交渉をせず、遠回しにSNSで信者に語りかけて、信者からネットを通して反対派議員を攻撃させ、言うことを聞かせようとしている。
【鈴木】あと、ボウソナロ政権の弱点は「社会保障制度改革」って看板は掲げましたが、それ以外は何もないことです。正直な話、社会保障制度改革が仮に通ったとしてもその後が見えません。そんなだから、議会が政府案とは別の社会保障制度改革案を出すなんてことを言い出す事態にもなりました。
 あるいは、財政改革の原案を憲政委員会で話し合い始めていたり。政府より、議会が先をいこうとしています。こんな状態では、「政府と議会、もっと仲良く」とか、そういう姿勢がぜんぜん見えない。やろうとしても、多分、反対勢力の方が強い。
【沢田】ボウソナロ大統領が何を考えているかわからないんですもん。

大統領制のまま事実上の議院内閣制に移行?

どんどん「影の首相」的な存在になっていくロドリゴ・マイア下院議長(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

どんどん「影の首相」的な存在になっていくロドリゴ・マイア下院議長(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

【深沢】このままいくと、極端な話、大統領制のまま、事実上の議員内閣制になりますよ。
 結局はロドリゴ・マイア下院議長が事実上の首相的なポジションに就いて、議会で全ての政策を提案して、多数決で決めて、政府にそれをやらせる…。こうなればもう事実上の議員内閣制だよ。
【鈴木】それがもろに、5月26日のフォーリャに出てましたよ。
【沢田】「議会から政策を提案しようとしている」っていう記事がありました。
【深沢】議会工作をしないボウソナロが大統領の間は、その方が現実的かも…。
【沢田】その方が平和ですよ。
【鈴木】その方が物事が動きます。
【深沢】民主主義ではありますしね。たとえ一部の狂信的ボウソナロ支持者がボウソナロ独裁を望んでも、議会は議会で、国民に選ばれた人たちだから。そこのところで、力を持った人が統治していくってほうが自然ではあるかな。
 結果的に伯国が良い方向に進むのであれば、実権を握るのは大統領でも下院議長でもよいってことでしょうね。
 まあ、今後半年、どうなるかまったく分かりませんが、我々は様子を見守りましょう。
【井戸】年末も「社会保障制度改革、まだ難航中」なんて記事を書くの嫌ですよ…。

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