ホーム | 日系社会ニュース | 垣花八洋夫『私の体験記』=一風変わったコラム風自分史

垣花八洋夫『私の体験記』=一風変わったコラム風自分史

『私の体験記』を手にする垣花八洋夫さん

 垣花八洋夫(かきのはな・やようお)さんが『楽書倶楽部』への投稿をまとめた本『私の体験記』(日毎叢書企画出版、152頁)を、この9月に刊行した。
 垣花さんは沖縄県の多良間島出身で、1970年に技術移民として渡伯した。多良間島は、宮古島と石垣島の中間に位置する自然豊かな小さな島だ。地図で見ると、沖縄本島よりも台湾の方がずっと近い。
 そこでの子供時代の思い出を綴った「多良間島の思い出」は1~4節まである。ヤシガニの項では《このカニは茹でると甲羅が真っ赤に染まり、厚い殻を割って食べたカニの足や腹部のカニ味噌がとても美味しかったことを覚えている》(30P)とある。
 またウミガメの卵を母がゆで卵にして食べたとも。《なまぐさい匂いで、沢山は食べられなかった》(32P)とか。珍しい経験だ。
 かと思えば、強い台風に何度も襲われると連絡船が途絶えて食糧が不足し、ソテツの幹を切り倒して、その髄をカンナで削ってカンナ屑状のものを毒抜きして食べたという。《無毒化したかどうかの見極めには十分な経験が必要だった。中には中毒死する家族もあり、「ソテツ地獄」と呼ばれた》(40P)との一節も。
 そのほか「孤老の日々」は6節まであり、アパート暮らしの節水方法、小鳥が大好きな隣人の話、貸し農園があった良いなという希望など共感を呼ぶような話題が盛りだくさん。
 パラー州のアルブラスで働いていた時代のアマゾンでの生活の様子も。実に読みやすい文章で、エキゾチックな沖縄やアマゾンでの経験が所々に挟み込まれ、引き込まれるように読み終えてしまう、一風変わったコラム風の自分史だ。身の回りにある日常的な鳥や虫、物事に対し、技術移住者らしく数字を上げながら奥深く解説している。
 関心のある人は日舞叢書企画出版(11・3341・2113、nitimaisousho@gmail.com)まで連絡を。

image_print