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ボウソナロでさえ飛び乗れなかったイラン攻撃

8日のトランプ大統領(Official White House Photo by Shealah Craighead)

 正月明けて早々の、米軍によるイランのソレイマニ司令官殺害事件は、世界を「第3次世界大戦突入か?」と震撼とさせた。だが、今後まだ事態が変わりうる可能性があるとは言え、現時点ではそのような形にすぐに進んでいく可能性は高くない。
 なぜか。それは、トランプ大統領が今回起こした動きへの共感が高まらなかったためだ。コラム子自身も、91年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争のときのことも覚えているが、ここまで米国政府に対しての反応が冷ややかだったことはない。
 その理由は、今回のトランプ氏の行動があまりに唐突で、かつ、別の目的が疑われるような事態を抱えすぎていたためだ。
 一つはトランプ氏が昨年末に、下院で大統領罷免承認を受けていたこと。そしてもうひとつは、今年が大統領選挙の年であるということだ。
 トランプ氏にとっては非常に不利な内容の動画が、この事件の後、大きく注目された。それは2011年秋、当のトランプ氏自身が「(当時の)オバマ大統領はイランを攻撃する。なぜなら、それが彼が2012年の大統領選で当選するための唯一の手段だからだ」と言って批判したもの。まるで過去の自分が、現在の自分を風刺するような皮肉となってしまった。
 さらに、ソレイマニ司令官暗殺までの内幕も報道された。ロサンゼルス・タイムス紙4日付電子版の報道によると、休暇中のトランプ氏に国防省のスタッフが今後の中東対策をどうするかの案をリストアップしたところ、スタッフでさえ「最も実現性のないもの」としてあげていたソレイマニ氏暗殺をトランプ氏が選択したため仰天したとのことだ。
 さすがにこうした事情がさらされてしまうと、いくらイラン攻撃を「テロのための正義の戦い」などと主張しても、素直に同調する国は現れにくいもの。欧米諸国はおろか、中東でアラブ諸国と対立するユダヤ教の国イスラエルの極右大統領ネタニヤフ氏でさえ「これは米国の問題だから」と、この件に関与するのをためらったほどだ。
 こんな状況の中、ボウソナロ大統領も、普段の言動から察するに、本当なら「敬愛するトランプ氏と共に、今こそ自分たちが正義だと示せるチャンス」とばかりに、トランプ氏が漕いだ舟に飛び乗りたかったのではないかと思う。
 だが、ブラジル内での現実は厳しいものだった。ひとつはまず軍隊の存在。ブラジル軍は伝統的に、他国の紛争には「中立」の立場を強く保っている。その考えはとりわけ軍の上層部に強いものだ。もしボウソナロ氏が暴走して「イランに派兵を」などと言い出そうものなら、ボウソナロ政権を発足時から支えていた軍部からの信頼を喪失することにもなりかねない。
 そしてもうひとつが、「貿易相手としてのイラン」で、これが想像以上に大きかった。現在のブラジルは輸出の大部分を農産品に頼っている状況だが、イランは中東で1位、全世界でも5番目に輸出量の大きな相手。そんな国を敵に回して貿易を止めてしまったとしたら、経済的に大打撃となり、緩やかながら回復しつつある景気にも水をさすこととなってしまう。
 このような状況では、イラン攻撃は米国にとっても、ブラジルにとっても、他の国にとっても何の得にもならない。8日、トランプ大統領は軍事攻撃をトーンダウンさせる声明を早速行なったが、それも無理もないだろう。(陽)

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