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特別寄稿=習中国主席国賓来日を支持する=2020年1月29日記=ポルト・アレグレ在住  杉村士朗

習近平とドナルド・トランプ(2017年11月8日、The White House c/o:Shealah Craighead [Public domain])

 私はブラジルに在留する一人の日本国民の立場から、母国の政治について発言する。

 日本国内には尖閣諸島や日本人拘束問題等を理由に習主席国賓来日に反対論があるが、国賓来日を調整する安倍首相を私は支持する。

 私はかねてより、全体主義中国の急成長が、世界の自由民主国家圏への驚異であるとの強い警戒感をもつ。中国急成長の最大の貢献国は、中国最大貿易相手国の米国である。

 しかし、最近になって米国は全体主義中国が民主主義米国の脅威であることに気付いた。「市場経済を導入した中国が開かれた社会になると期待したが裏切られた」とするポンペオ米国務長官の言葉は正直であると私は考える。

 米国に次ぐ世界第2の大国中国が、自民族の再興と新国際秩序構築の大志をもつのは、正当である。日本、米国その他、自由民主国家圏にとって、中国国家ないしは中国民族そのものが脅威なのでない。「人間が生まれながらにしてもつ固有の基本的人権」を無視した全体主義と、「人間は生まれながらに国家の侵害できない固有の基本的人権」をもつとする価値観に立脚する資本主義が合体した独裁制中国が脅威なのだ。

 全体主義中国がいつまで存続し、どこへ到達するのか私にはわからない。

 しかし、全体主義中国の崩壊を次のシナリオで想定することはできる。

《1》対外戦争の副作用

《2》実体社会の成熟による自己分解

 多分、そのようなシナリオをもっとも良く理解しているのは、習主席を頂点とする中国共産党エリート層であろう。それゆえに、ますます社会統制を強化し、「富国強兵」の国策を強行する。

 対する日本は、日米同盟を深化し、自己防衛力を強化する正しい選択をする。

 日米同盟は日本と米国の相互利益をもとに成立する。もし米国が中国やロシアのユーラシア大陸国と有事となれば、米国防最前線は太平洋を越えて東アジアの日本になる。日本は当然、米敵対国の攻撃目標となる。一方米国は、日本防衛を約束する。

 かりに、「国際政治力学」が変化して「日本防衛が米国益に反する」と判断するに至る新しい力学が発生したならば、米国はためらわず日米同盟を破棄するだろう。

 以上のような「当然の理」にわざわざ私が言及するのは、次の2点を強調したいからである。

《1》日本の安全保障にリスクのない選択肢は無い

《2》日米同盟下では破局的戦争を回避するために日本が中国と友好関係を築くことが「米国の国益」となり、米国が中国と友好関係を築くことが「日本の国益」になる。

 日米同盟の本質は、戦争のためでなく戦争予防にある。

 私には中国と友好関係を築こうとする安倍首相の努力を「米国への裏切り行為」とか米中対立を利用して「経済利益を獲ようとするエコノミック・アニマル行為」とする見方が一体どこから生まれるのか、まったく不可解でならない。

 私は習主席国賓来日を支持する。そして、世界的視野と歴史的視野から決断を回避しない安倍首相を尊敬する。

 日本国内で、安倍首相が強引、専横、傲慢等の批判を受けるのを私は承知している。

 しかしながら、わたしは何事にも「白でもないが黒でもない」とする曖昧な立場を選択したり、決断を避けて様子見することを好み、他人の一言一句に一喜一憂する日本国民の特異性と、「次世代へより豊かで力強い日本を引き渡すため、今払うべき犠牲は何か」の問題意識がなく、雑多な利益の寄せ集めになりがちな、大志に欠けた日本国民の「民意」が、日本発展の大きな障害であると考える。

 

 

 

 

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