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ゴミの山から食べ物を探す人が増えた悲しい現実

ごみ収集車の中に頭を突っ込み、食べ物を探す人々(24日付G1サイトの記事の一部)

ごみ収集車の中に頭を突っ込み、食べ物を探す人々(24日付G1サイトの記事の一部)

 新型コロナの世界的な流行は人々の生活のあり方を大きく変えた。ブラジルでも、60万を超える犠牲者が出て、数え切れないほどの人々が後遺症に苦しんでいる。最近では失業したり、家計を支える人を失った上、高インフレにも襲われて、食べていく事さえままならない人が増えている事を示す報道も目に付く。
 例えば、サンパウロ市の市営市場で出たゴミの中から食べられる物を探す人達がいると報じた24日付フォーリャ紙や、ゴミ収集車の中や路上に置かれたゴミから食べられる物はないかと探すフォルタレーザ市の人々の姿を報じた18、24同日付G1サイトなどがある。
 その他にも、スーパーから出る骨や肉片を探す人、骨をもらって作ったスープで子供や孫に食べさせている婦人、「骨は売り物」と書いた紙を張り出して批判されて張り紙を外した肉屋の報道もあり、例を挙げたらきりがない。
 郊外のゴミ捨て場で食べ物を探す人の話はかなり前からあるが、街中で普通の身なりの人達がゴミ収集車や路上のゴミの山に頭を突っ込み、手を伸ばして食べ物を探す姿を記事で見て驚いた。
 これらはみな、庶民が困窮している証拠だ。インフレは10%を超え、肉の価格は20%以上上昇という中、雇用が保証されている人でもインフレを肌で感じている。失業したり、家計を支えている人を失ったりした人達ならなおの事だ。
 悪い事に、人々の善意を悪用し、なけなしの金の中からもらった金を麻薬や酒を買うのに使う人や、寄付を求めるふりをし、そこで得た個人情報を使って善意の人の金を盗むという輩までおり、名前を使われた団体が困っているという話もあるからあきれ返る。
 空腹の人には魚を与えず、釣りのやり方を教えろという人もいる。だが、釣りを教えて助けられるのは、ある程度健康で体力もある人だ。本当に弱り、釣りに行く事も釣れるまで待つ事もできない人には、調理した魚を与える事も必要になる。コロナ禍やインフレで銘柄などのこだわりは捨て、手が届く品を買う事を余儀なくされた人も多いはずだ。
 庶民が苦しむ一方で、政府には税金の無駄遣いとしか思えない出費が多い。使用期限切れの医薬品や検査用試薬の山や、社会保障政策の支給額引き上げを含む点数稼ぎのための歳出上限規制書き換えは納得いかない。
 だが、アウシリオ・ブラジルへの移行で緊急支援金の恩恵を失う人が2200万人いるという報道には胸が痛む。ゴミの中から食べ物を探すほど困窮した人や、社会的弱者に手が届く社会保障、救済策の実現を望むのは無理なのだろうか。(み)

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