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繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(5)

 さすがの仁科も、ひるんだのか引き揚げた様子。
 この話を翌日、朝食をとりながら聴いていた永岡が憤然と立って出て行った。しまこが後を追ったが、うつむき加減に引き返してきた。二人の間が終わりになったらしい。
「永ちゃんが、島子ば好いとっちゃ知らんかったばってん」と仁科があやまったが後の祭り。
 高松でも、慰安旅行に参加してたサービス下請け会社社長の総領の中村達頼が、しまこのベッドにもぐりこみ、相部屋の空手黒帯女性の鹿児島営業所の上之園が中村の金玉を一撃し事無きを得た。
 島ちゃんは、どうも愛嬌が良過ぎて隙があるのか狙われるタイプ。ワイも狙いたいぐらいヒップがプリプリしてた。
 ワイは、ネグリジェ姿の横綱に言い寄られ、危うく寄り切られそうになった。寄り身の彼女が18才、受身のワイは28才。
 あの時は下腹が、び~んと反応したけど慰安旅行の幹事役で取り締まる責任上、なにもせず惜しいことをしてしまった。
 ところが運良く、翌年彼女の父親が転勤で名古屋に引っ越すことになったので、横綱退社の日に、新天町の「ロイヤル」でガーリック・ステーキをご馳走して、お返しに彼女をご馳走になり1年越しの望みを叶えてあげた。
 太めのうら若い娘の肉体はレアのステーキより、うまかっちゃん。 
「飲兵衛安」サービス主任の安永良右衛門がビールを飲み過ぎ、高松支店のカーペットに小便を垂れ流した。
 日本最西端の長崎県五島列島出身の安っさんは、最東端の帯広営業所長の頃に暖房手当を呑んでしまい、寒い部屋で暮らしてたとか。暖房手当で体内を暖めてた剛毅な男。
 故郷から結婚式に帰って来いとの電報を受け、誰の結婚式かと思って日本の東の果てから西の端までたどりついたら、なんと自分の結婚式。
 この時代離れした名前の豪傑は慰安旅行に行った熱海で、やくざと大喧嘩して刀傷を負うたが勝ち名乗りをあげ、当時の社長の小宮虎之助からの褒美で主任に昇格したと云う逸話もある。
 小宮社長本人は本物のやくざで、鶴見騒擾事件の旗頭。終戦直後に全国の東芝の工場には赤旗が、はためき運送屋の小宮さんの出入りする富士工場でも、金庫は空っぽで運送料の支払いが滞っていた。
 そこへ虎之助が売掛金の取立てに日本刀を持って乗り込んだら役職者は皆逃げてしまい、小柄の経理課長の河村允明が、ただ独り眼光鋭く座って睨みつけていたと社長は述懐する。
 事実は、睨みつけてたのではなく、気を失って目が据わってたのだが、お虎さんは河村さんを度胸の据わった男と思ったそうな。こうして、通信機と医療機の工場で運送料の換わりに商品を差し押さえたが、これを売らないと金にならないので、河村会長、小宮社長のコンビでレントゲンを売り出したのが東芝放射線の前身の日本医療電気だが・・・、この出来事は社史のどこにも書いてない。
 おやじからは、このように仕事や会社の秘史だけでなく、おやじが戦時中に朝鮮に居た頃の話や、政界上層部につながる人脈の裏話まであり、コップ酒を傾けながら、みんなステテコ一丁で車座になり寝食を忘れて聴き入った。

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