ホーム | Free | 特集=日本政府支援事業「サンパウロ日伯援護協会」コロナ感染防止キャンペーン=新型コロナとの共生を視野に=SC日本病院専門医に聞く感染対策=ワクチン接種で患者大幅減少=家庭内感染に注意呼びかけ

特集=日本政府支援事業「サンパウロ日伯援護協会」コロナ感染防止キャンペーン=新型コロナとの共生を視野に=SC日本病院専門医に聞く感染対策=ワクチン接種で患者大幅減少=家庭内感染に注意呼びかけ

ジョルダーナ・マシャード医師(提供写真)

 サンタクルス日本病院(佐藤マリオ理事長)の新型コロナウイルス感染対策について、10月29日掲載の第1回目に続いて、後半となる第2回目は、同病院感染病専門医のジョルダーナ・マシャード医師に話を聞いた。同医師によると一般的に新型コロナの主な感染ルートは、対策をしていない一般家庭にあるという。ワクチン接種によってコロナ患者が減少しつつある現在も、(1)マスクの着用(2)ソーシャル・ディスタンス(3)手指の洗浄、といった基本的な感染対策の重要性を挙げている。

感染対策しない家庭に原因

 同病院では、昨年3月のパンデミックから今年9月までの約1年半で、コロナ患者およびコロナ感染疑いのある患者に対応した数は2万9417人。そのうち、1431人がコロナ患者として入院した。
 その後、今年の7月から8月にかけて聖州全体のコロナ患者数が減少したこともあり、同病院でもコロナ患者専用病棟、ICU(集中治療室)ともに患者数が大幅に減少している。
 そうした中で、同病院に3人いる感染病専門医のうちの1人であるマシャード医師は、新型コロナの主な感染ルートがマスク等の対策を施していない一般家庭にあると説明した。「誕生日や結婚式、家族の集まりなどのイベントは、最も感染率が高くなります」と警告している。

基本的な感染対策と衛生管理

 一般の感染対策としては基本的に、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンス、手指の洗浄の3つが、やはり重要視されている。その中でも特に、閉鎖された場所や狭い空間での人数制限をすることが大切だという。
 マシャード医師は「(昨年3月から)パンデミックが始まってからは、こうした基本的な感染対策は当たり前のことになっていると思います。しかし、自宅でコロナ感染が疑われる症状が出た場合は、すぐにPCR検査を受けて陽性反応があるか否かを確認してください」と呼びかける。
 また、家庭内でコロナ感染者が発生した場合は、他の家族から隔離する必要があるとし、「特に、家族の中にワクチン未接種者や3回目のワクチン接種(ブースター接種)を受けていない高齢者がいる場合は、大きな家族イベントは避けてください」と注意を促している。
 同医師は主な感染経路は「空気からの感染である」とし、新型コロナに関わらず、基本的な衛生管理を行う必要があるとしている。当然ながら、新型コロナ以外にも数え切れないほどの細菌や微生物が存在するため、これら基本的な対策は常に有効的な衛生対策となっている。

ワクチン接種の効果

 マシャード医師は今年3月の第2波のピーク以降のコロナ患者減少について、「これは、確実にワクチン接種効果による結果です」と断言した。「ワクチンは感染そのものを防ぐものではありませんが、重症化を防ぎます。ワクチン接種によって、病院の稼働率も下がりました」と説明する。
 また、ブースター接種(3回目のワクチン接種)について同医師は「ワクチンの防御力は時間とともに低下するという特性があり、コロナワクチンに限らず、他のワクチンでも同じことが起こります」と語る。
 そのため、優先グループである免疫不全者や高齢者に対する3回目のワクチン投与がすでに承認、実施されており、これにより再感染者の入院を避けることができるとして、その必要性を強調している。

減少したコロナ患者

 サンタクルス日本病院での新型コロナ患者の現状についてマシャード医師は、「今は少し落ち着いています。昨年は、コロナ専用病棟とICUに多くの患者がいましたが、今年7月、8月の2カ月間はかなり減少しました」と話す。
 しかし、同病院でのコロナ専用病棟はいまだ必要不可欠であるとし、一般病棟とコロナ専用病棟を完全に分けることで院内感染の防止対策を徹底するなど、常に警戒する必要性を説く。
 同医師は印象に残っているコロナ感染患者のケースとして、30代の非日系ブラジル人男性患者の症例を挙げる。この患者は当初、何の基礎疾患(持病)もなかったが、コロナ感染で症状が悪化。約1カ月間に及ぶ入院での闘病後、最終的に同病院内に配備されていたECMO(体外式膜型人工肺)によって回復することができたという。
 そのほか、日本からの駐在員や韓国人がコロナ患者として、サンタクルス日本病院に入院した例もあったそうだ。

コロナで学んだこと

 新型コロナを通じて学んだこととしてマシャード医師は、「当初、誰も治療法について知りませんでしたが、主な感染経路が空気感染であることだけは知っていました。パンデミックを通して私たちは、個人の防護策や病院環境での防護具の使用について多くのことを学びました」と振り返る。
 同医師によると、サンタクルス日本病院の医師たちは「何がベストな防護策なのか」という試行錯誤を、パンデミックの期間中、何度も繰り返してきたそうだ。
「病院内で自分自身を守り、他の人を守り、クラスター感染を避けるための最善の方法、隔離期間など、パンデミック中の研究結果によって判明したことも多いです」
 具体的な治療方法に関しては「(今年8月)現在のところは何も無い」とし、「いくつかの薬が試され、いくつかの研究が行われましたが、現在はまだウイルスに特効的な薬はないことが分かっています」と語る。
 一方で、ウイルスに特効的に作用する薬ではないが、ウイルスが引き起こす炎症に作用するものもあるという。「例えば、コルチコイド(副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン)の使用ですが、重症の場合は本当に効果があるようです」と、これまでの経験から得た知識を説明する。
 「これまでのところ、特定の薬の使用は証明されておらず、(一般の)人々は必死になって効果のない複数の薬を使用したり、時には望ましくない副作用を引き起こすこともありました」との実情を語った。
 その上で、「このパンデミックで私たちが学んだ最も重要なことは、コロナ患者をどのように管理するかということでした。新型コロナはこれまでに見たことのないものであり、特にICU(集中治療室)で重篤な状態にある患者を簡単に管理することはできません。インフルエンザなど、他のウイルス感染症で見慣れた臨床症状もいくつかあり、その意味でも勉強になりました」と、コロナ禍での経験を新たな学びとして捉えている。

風土病としてのコロナ

 今後の新型コロナについて同医師は、風土病として残存していくと指摘する。
 「ウイルスは時間が経てばウイルスの適応の問題として、突然変異を起こします。必ずしも体に悪いというわけではありませんが、これらの変異の中には、感染症を引き起こす可能性があります。私たちが想像するのは、新型コロナも今後、インフルエンザのように常に患者がいるような風土病になるということです。私たちは永遠にコロナから解放されることはなく、それは循環し続ける風土病のようなウイルスになるということです」とし、「ウィズコロナ」(新型コロナとの共生)を論じて締めくくった。

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