ホーム | 日系社会ニュース | 「法は足踏みできぬ」=会議所昼食会で=上田判事、ブラジルの現状語る

「法は足踏みできぬ」=会議所昼食会で=上田判事、ブラジルの現状語る

ニッケイ新聞 2007年11月10日付け

 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の十月定例昼食会が、去る十月十九日正午からルネッサンスサンパウロホテルで行われた。日系人として初めて連邦高等裁判所の判事になった上田雅三氏が「社会平和に向けた市民、企業、社会、司法が挑むべきこと」について講演を行った。
 講演では先ず、上田判事は自分の経歴について簡単に話した後、日系社会の根底は共存とともにあり、個人の幸福ではなく他人の幸せを求めるべきだ、と強調した。
 社会は共同生活の上で成り立っていて、法はその社会を保つためにある。その良い例として、日伯両国企業活動の促進や会員の各種活動の進展につとめているブラジル日本商工会議所を挙げた。
 また、首都をリオからブラジリアへと移転した当時のクビチェック大統領を例に挙げ、周囲から大反対を受けたが、大統領は多くの日本人が入植しているから問題ないと語ったことも話した。
 ブラジルは全てを受入れる懐の大きさがあり、危機は脱する、と楽観的に見ているが、「司法の鈍さや契約のいざこざが〃離陸〃を遅らせている」と指摘。
 その例として、アメリカでは二百年の間に二十回以下しか憲法改正が行われていないが、ブラジルでは一九八六年に制定された法律が五十四回も改正されていることを挙げた。
 「社会の話し合いが少ないためにこのようなことが起こっている」とブラジルの状態を嘆いた。また、「社会は変化を伴なっているため、法も同時に変化していかなければならない」と語気を強めた。クローンなど新たな問題が出てくるために「法は止まることはできない」と説明した。
 日本の裁判件数が年間一万五千件に対して、ブラジルは二十万件以上起きていることにふれながら、上田判事は最後に「社会の構成の中で、力強い国は和解を求めるものだ」と締めくくった。

image_print