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コラム 樹海

 去る十月、サンパウロ靖国講五十周年慰霊祭に招かれ、文協ビル貴賓室で祭儀の祭司をつとめた靖国神社前宮司の湯澤貞氏が、帰国後、「ブラジルに生きる日本の心」と題した随想を発表した。掲載誌は「新しい歴史教科書をつくる会」の会報『史』(ふみ、十一月号)であった▼内容は、湯澤氏が、慰霊祭の後、接した在伯日系人の思い、発言を受け「ブラジルではこうだった」と紹介したものである。大方(おおかた)の一世、準二世、熟年二世の共感を得るものと思われる▼まず、慰霊祭に参列した人たち二百人へのお礼。それは、五十年もの長きにわたり、遠いブラジルから母国の戦没した英霊に、感謝と慰霊の祈りを捧げている誠心に対するものだった▼松柏学園の生徒たちの英霊を偲ぶ作文にも感銘を受け、思わず日本の青少年と比較したという。後者は、作文の題材として「英霊」など取り上げないから、当然のように理解の外であろう▼湯澤氏と懇談した靖国講の人たちが熱望したのは、教育勅語の精神を取り戻せ、ということだった。日本における現在の心の荒廃は、教育勅語を排除したのが原因、今こそ戦前の道徳心を取り戻し、勤勉で勇気があって、正直で心豊かな、誇りある日本人に回帰せよ、と主張したのである▼半世紀ほど前、来伯したことがある評論家大宅壮一は、帰国後、「明治の日本人を見たければブラジルに行け」の意味のことを述べた。今回は、正(まさ)しく、湯澤氏がそう書いたのである。 (神)

04/12/15

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