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文芸

『ピンドラーマ』

 コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』2月号が発刊された。 「ブラジルビジネスで失敗しない秘訣」「セオ・カルラゥン・ド・ペルーシェ~サンバの砦」に、恒例の法律相談やサッカー、グルメ、イベント情報も掲載。 日系書店、日本食店などで配布中。問い合わせは同出版社(11・3277・4121)まで。

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ガウショ物語=(1)=牛飼いブラウを紹介しよう

ガウショの像

 お若いの、牛飼いのブラウさんを紹介しよう。 「わしはこの州のなか内を、あちこち気の向くままに渡り歩いてきた。草木もない海岸の焼けるような砂地の熱さも知ったし、絵に描いたみたいに美しいミリン湖の島々で遊んだこともある。 ある時は、波のうねりみたいな起伏のあるサンタナの大平原の広さに疲れ果て、また、雄大なウルグアイ河の水に手をひた ...

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パナマを越えて=本間剛夫=32

 私は正しい判断を述べたと思った。 しかし、中佐の面を不快な色が走った。中佐は、日本人は世界のどこに住もうと、日本人であることに変わりがある筈がない、と信じているのだろう。アメリカやブラジルの日系二世たちが、父親のそうした古く、単純な考え方の下で、如何に悩んでいるか。とくに、アメリカ生まれの日系人があくまでも日本人としてしか処遇 ...

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ニッケイ新聞の本『一粒の米もし死なずば』紹介

『一粒の米もし死なずば』

注文は無明舎までhttp://www.mumyosha.co.jp/docs/14new/hitotubu.html 《〝面白い〟というと語弊があるかもしれないが、出来の悪い推理小説よりもはるかに刺激的で、歴史上のナゾを解き明かしながら連鎖的に叙述が繋がっている歴史物語となっている》『ブラジル特報』2015年1月号 《外国への関 ...

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パナマを越えて=本間剛夫=31

 中尉は帝国軍人として、それがいいたかったのだ。まだ少年の弟を残している彼は、皇軍の選ばれた士官として殉国の忠誠心に培われたのだから、私の二重国籍の不純さは、私の背徳思想を現すものであり、許し難いのだろう。 返す言葉もなく、立ち上がった。 私は日本に帰ってから日本人であるよりも、むしろブラジル人でありたいと考えるようになった。日 ...

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パナマを越えて=本間剛夫=30

 確かに衛生兵という職務は患者に安心感を与え、慰安を引き出すものだ。兵は勿論、将校さえも衛生兵の言動が病状を左右する例は枚挙にいとまがない。 私が患者に近ずくと、今まで眼を閉じ、身じろぎもしなかった兵たちの間から、かすかなサワサワという動きが聞こえ始める。そして、回診を終えた私の背後から重い淀みが襲いかかるのを感じる。また彼らは ...

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パナマを越えて=本間剛夫=29

 会場で起こった爆音は低空で豪の上を舞っているらしく、いつになく執拗に患者の横たわる洞窟の空気を震わせた。何かが、起こりそうだ――不安が、朝の回診を始めたばかりの衛生兵たちを襲った。 「編隊でありますか」 外光がほのかに届く病床に横になっている上等兵が怯(おび)えた眼を私に向けた。我々の不安はそのまま患者たちに伝播するらしく、回 ...

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パナマを越えて=本間剛夫=28

流離 = 第一部       1  今日も回診の時刻になると、例の如く敵の偵察機がやってきた。いつも午前と午後、殆ど同時刻に現れるので我々は定期便と呼んでいた。敵は抵抗力を失っていると甘く見ているからに違いなかった。 ブリキの薄金を叩くようなキンキンと頭の芯に響く偵察機が、周囲十六キロしかない孤島の上空を何回か低空で旋回する。数 ...

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パナマを越えて=本間剛夫=27

 コーチはニヤリと頬をゆがめた。それは今まで一度も見せたことがなかった表情だった。無邪気な人なつこい笑顔だった。 「君は中野学校を知っているかね。知らないだろうね。軍の謀略学校だ。わしはそこで教育を受けた二重国籍の日本軍人だよ。わかるかな。軍人で二重国籍が許されるわけはない。だが、それだからこそ、わしは日本のために好都合に働れた ...

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パナマを越えて=本間剛夫=26

「その頃、アマゾン調査団という日本人たちがボリヴィア国境までやって来たんだ。その団長というのが父の親戚だった。よく調べてくれたもんだよ。わしは、その団長に連れられて日本へ来た。その団長をわしは父と呼ぶようになって、日本の学校を出た。……まあそんなところだよ……」 私は東京練馬にある、日本力行会の図書室で「秘露棉花移民史」でそのこ ...

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