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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る

「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る(17 終)=□第2部□2世世代の特殊性=ブラジル社会が期待する日系性=バイリンガル教育がかなめ

ニッケイ新聞 2008年4月16日付け  〇七年一月十三日に行われた第二回日本語教師認定証授与式で、南大河州のドイツ人植民地から始まった町、イボチ市より参加した高田照子さんから、感動的な逸話が披露された。  「自分はシスターとしてブラジルに派遣され、日本語を教えて欲しいと頼まれた時、どうしてブラジルで日本語が必要なのだろうと不思 ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(16)=解体されるコロニアの基盤=権威を失い求心力を落とす

ニッケイ新聞 2008年4月15日付け  各家庭のバイリンガル環境を支えてきたコロニアという日本語環境の重要性は前述してきた通りだが、近年はコロニア自体が根底から変質してきている。  九〇年代、各地の日系集団地を結ぶ大動脈のような役割を果たしていたコチア産組、南伯農協、南米銀行が相次いで姿を消した。いずれも日本語環境という特殊事 ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(15)=継承と統合ともに必要=コロニアの両輪の役割

ニッケイ新聞 2008年4月12日付け  「コロニア」は、日本語を日常言語とする日本移民が中心になり、日本語や日本文化、日本的気質を持つ同士が親睦、相互扶助をするために生まれた。これは一種のコムニダーデであり、一般ブラジル社会からすると否応なく特殊な存在だ。  逆にエリートという存在は、その国の中枢を担う人材であり、本質的に愛国 ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(14)=どんな日系人特性が残るか=意外と伝統的な継承文化

ニッケイ新聞 2008年4月11日付け  原田清弁護士の編著『O Nikkei no Brasil』には自ら執筆した第二章に、日系人の新定義がある。  「今日の日系人は日本人とは違う。単に二重であるのではなく、日本人の魂をもってブラジル人として振る舞う。日系人はブラジルを母国とする日本人とその子孫のことで、本国ではもう見られない ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(13)=「コロニアは存在しない」=統合を強調する2世たち

ニッケイ新聞 2008年4月10日付け  日系人口百五十万人のうち、二十数万人が「コロニア」といわれる社会としての実態のある部分だと以前、説明した。二世エリートたちからすると、「コロニア」という言葉ですら反発を感じるようだ。  USP法学部卒で、現在もそこで教職にある原田清弁護士(66、二世)がコーディネートして今年一月に二世に ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(12)=戦争とアイデンティティ=エリートになるハードル

ニッケイ新聞 2008年4月9日付け  今まで見てきたように、複雑なアイデンティティを抱えがちな家庭環境に育った二世が、思春期の微妙な時期を戦中戦後にすごすなかで、日本や日本文化に対して深いトラウマ(精神的な傷)や強い劣等感をもった層が相当数生まれた。  昨年十二月にサンパウロ州グアインベー市(旧上塚第二植民地)で地元文協関係者 ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る(11)=□第2部□2世世代の特殊性=言語と共に態度も変わる=「魂を取り替えるに等しい」

ニッケイ新聞 2008年4月8日付け  言葉は力だ。十九世紀にフランスで活躍した文献学者ガストン・パリは有名な言葉を残した。「言語を取り替えることは、魂を取り替えるに等しい」と。つまり言葉は、たんなる情報の伝達手段ではなく、一つの社会の文化背景、歴史なども反映している。  普段は実に温厚な感じで日本語をしゃべるバイリンガル二世が ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(10)=「通じたのに理解されない」=伝わらないニュアンス

ニッケイ新聞 2008年4月4日付け  「言葉としての日本語は通じているのに、こちらが伝えたいと思っている真意が理解されていない」  母語話者でない二世、三世などと日本語で話していて、そんなもどかしさを感じた経験のある人は多い。  相手が日本語を理解すると思った時、同時に、その背景にある「日本的な思考パターン」も理解されていると ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(9)=「日本で生まれたブラジル人」=上原幸啓さんの場合

ニッケイ新聞 2008年4月3日付け  「ルーラ大統領、私は日本で生まれたブラジル人です」。百周年記念協会理事長の上原幸啓さん(80、沖縄県出身)は、一月十七日に行われた連邦政府主催の百周年開幕式典で、そう自己紹介し、全伯の日系コミュニティを代表してポ語で挨拶した。  今まで紹介してきたようなバイリンガル的視点で人物像を見てみる ...

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「百年の知恵」=日系人とバイリンガ=多言語と人格形成の関係を探る=□第2部□2世世代の特殊性(8)=セミリンガルの罠(わな)=アイデンティティの危機

ニッケイ新聞 2008年4月2日付け  バイリンガル教育には、ある程度の知識を持って臨まないと、思わぬ結果を招くこともある。二言語話者に育てようとして、どちらも中途半端なセミリンガルになってしまう危険性、そしてアイデンティティの不安定性さだ。   ◎    ◎  戦前の植民地にあった小学校などのように、授業も日系人ばかりの場合は ...

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