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特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員

特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(5)=乗継ぎ続け南下

ニッケイ新聞 2012年1月21日付け  午前9時10分、ガタンとひと揺れし、新潟駅行き特急いなほ8号が秋田駅を発車した。羽越本線をたどるこの列車も半室グリーンで、客はわたしとドイツ人らしき初老の夫婦1組だけ。夫がなにごとか言い、妻のほうはヤーヤーと頷いている。  ほどなくして妻が立ち上がり、グリーン車後部に歩き去った。わたしは ...

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特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(4)=出発進行いざ

ニッケイ新聞 2012年1月20日付け  9月2日午前6時起床。宿泊ホテルの朝食はまだ準備できていないが、これは計算済みだった。朝めし替わりに、大館の鶏めし弁当がお目当てなのだ。  全国3千種といわれる駅弁界にあって、鶏めし弁当も数多いなか、大館鶏めし弁当は『駅弁大全』(文藝春秋社刊)にも載る特選弁当である。地元産の名物、比内地 ...

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特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(3)=鈍行もまた楽し

ニッケイ新聞 2012年1月19日付け  昨今、鈍行という俗語はあまり使われない。つまり普通列車であり、ついでにいえば急行のほうもほとんど消え、もっぱら「快速」が近距離区間をお得意先に走り回っている。  ただし花輪線は、鈍行という言葉の響きこそ似つかわしい。ディーゼルカー(気動車)で通常2両編成、たまには1両だけでコトコトと田舎 ...

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特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(2)=故郷でまず助走

ニッケイ新聞 2012年1月18日付け  本邦初の旅客列車は1872年、周知のように東京・新橋—横浜・桜木町間の路線に登場する。陸(おか)蒸気と呼ばれた英国製蒸気機関車が客車10両を牽引し、文明開化の夜明けを力強く疾走した。  ♪汽笛一声新橋をはや我汽車は離れたり〜 以後、全国各地へたちまち延びる路線に伴って、鉄道唱歌のほうもど ...

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特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(1)=望郷とは何ぞや

ニッケイ新聞 2012年1月17日付け  望郷という酒精分の濃い感情ついて、あまり深酔いしない程度に吟味してみた。長い異郷暮らしのせいか、年老いるにしたがって望郷心が募る。【望郷】「故郷を慕い望むこと」とは広辞苑の解釈だが、想い出されるのはほとんど年少の頃のことばかり。その時々の周囲の情景まで合わせ、色彩も鮮やかに記憶の古層から ...

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