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越境する日本文化 マンガ・アニメ(6)=違和感を超える面白さ=コロニア通らず入り込む

1月28日(火)

 昨年二月二十四日付エスタード紙国際面にでかでかと掲載された写真を見て、一瞬、目を疑った。コロンビアのメデリンの武装都市ゲリラが、奇妙なシャツを着てピストルをかまえていた。そうSamurai X(原題『るろうに剣心』)だ。マンガのセンスが、いかに国際的人気を博しているかの見本かもしれない。
 しかし、マンガやアニメに描かれるキャラクターは一般に、優柔不断で決断力に欠けるものが多い。「以心伝心」を尊ぶ日本と、「言わない方が悪い」と自己主張を重視するブラジルでは、おのずから好みの主人公は違うはずだ。にも関わらず、マンガ・アニメに限っては、どうして受け容れるのだろう。
 元来ブラジルでコミックといえば、アメリカのマーヴェル社に代表される『スーパーマン』『スパイダーマン』などのスーパーヒーロー路線が中心だった。
 日系四世のハヤシダ・マルセーロさん(二五)は「僕はずっとアメコミを読みつづけてきたから、自宅には三千冊ぐらいある。でも三年位前から一冊も買ってない。その代わりがマンガだ。マンガは同じ作者が最後まで描くから物語に一貫性があるし、第一に描写がきれい。あと種類が豊富だから、常に新鮮」と絶賛する。
 アメコミでは一度人気がでたキャラクターは、数年ごとに作者を取り換えながら延々と続く。時々の作者の好みで性格や状況設定はおろか、人物デザインまでどんどん変る。
 Conrad社のカシウス・メダウアル編集コーディネータは「アメリカのヒーロー物に多くの読者は飽き飽きしている。知ってますか? スーパーマンは六四年間も歳をとってない」と一刀両断する。
 加えて「ブラジルには誇るべき〃ノヴェーラ文化〃があり、どんなに長くても、いつか終わりの来るストーリーに我々は長年慣れてきている。市場はもっと、現実に近い人物設定やストーリー、目新しい何かをマンガに求めている」と分析する。「マンガは欧米をはじめ、世界中で成功している。ブラジルもそれから逃れることはできない」。
 マンガ・アニメ情報誌編集者のペイショットさんは「世の中は、アメコミにありがちな〃善と悪の対立〃という単純な構図だけでないことを、みんな承知している」と指摘する。
 マンガの長所として「特に不安定な思春期の心の揺れ動きを表現する視点がすばらしい。マンガによく見られる現実逃避する若者像は、現実にブラジルにも現れてきており、必ずしも日本だけに特異な現象ではない」。
 一方、アニマンガ社の永田翼さんは「グローバル化により、世界中の中産階級の同じ世代は、同じような感覚を共有しはじめているのかもしれない」と感じている。さらに「良くも悪くも、日本という国が世界の最先端的な状況を抱えているから、そこで生まれるマンガ・アニメは国際性を持っている。アニメが世界的に受け容れられているのは、日本の文化が時代性を共有しはじめている一つの現れ」と分析する。
 前回までに見てきたように、衛星放送やインターネットなどの新しいメディアの発達により、マンガやアニメはコロニアのあたま越しに日本から直接流れ込んでいる。そして、文化的違和感を凌駕するほどの面白さを見せつけて、青年たちの心をつかんでいるようだ。
    (深沢正雪記者)

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