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ペルー=ワラルを訪ねて=下=地域に根づく診療所=現地の医師育成が課題

3月25日(火)

 ワラルにあるさくら診療所は二〇〇二年四月二十八日に開所して以来、良心的な診療費とリハビリ施設も充実したサーヴィスで地元住民の評価も高い。
 同市には四つの病院があるが、さくら診療所の地道な活動とリマの日秘総合診療所から派遣される優秀な医師たちの努力により、徐々に信頼を集めているようだ。
 現在、延べ二十五人の医師(六人が日系)がリマから通ってきている。来診者は毎日平均四十人ほど。開所してから八カ月間に七千人の来診者を迎えた。
 ワラル日系人協会の一機関であるさくら診療所の建設には日本政府が草の根無償事業として九万五千ドルを助成している。
 一万ドルをワラル日系人協会が負担したものの、最終的にかかった総額は十四万ドルと借金を抱えてのスタートだったが、「最終的には四階建ての診療所にしたい」と話す鈴木アマドールワラル日系人協会会長の鼻息は荒い。
 同診療所の山本ビクトル所長は、フジモリ政権時代の九一年に厚生大臣としてコレラ撲滅に尽力した。リマの日秘総合診療所で八年間、所長職を務め、現在でも日秘総合診療所で小児科を担当しており、ワラルに通うのは週に三回ほど。
 山本所長は「現在は医師全員がリマから来ているが、この地域での医師の育成がこれからの重要課題」と強調する。
 今年二月にはブラジルから第三国専門家として、リマの日秘診療所に派遣されていた斎藤えみこサンパウロ大学助教授が『レントゲン診断と予防歯学』についての講演を行った。
 他州からも聴講者が訪れるほどの好評振りに山本所長は「これからもペルー病理学会の人に講演してもらう準備がある」とワラルでの医療環境のレベルアップに余念がない。
 リハビリ施設に関しては日本のNGO組織が援助を行っている。これから国際協力事業団(JICA)は同組織を通じ、地域保険医療プログラムとして、同診療所に支援を行う考えだ。
 地域に対しては、一年に一度の無料定期健康診断を計画しており、すでに二月には無料検診キャンペーンも行っている。
 今まではリマの日秘総合診療所の医師が行っていたインカ学園の生徒への集団健康診断も、今年度からはさくら診療所が主体となって行っていくという。
 同診療所でフルタイムの医師として、約八カ月働いている若き医師ペーテル・千葉さんは「ゆくゆくはワラルに住む予定」と話す。
 「その時期は?」と聞くと「結婚してからかな」と答えるペーテルさんの笑顔にワラルの明るい将来を見た気がした。
(堀江剛史記者)

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