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教師になる前に=伊原さんバイクで 世界見る旅

5月24日(土)

 「ゴリラ」は一九七八年に発売された全長一・三メートル、全高〇・八メートルのホンダ製五十ccミニバイク。手元で寸法を確認すれば、その小ささに驚く。伊原正貴さん(三〇歳)は、その「ゴリラ」に乗って世界を走り回る青年だ。
 一九九九年八月十四日に関西国際空港を出発。カナダのバンクーバー市を起点に、アラスカ州、アメリカ合衆国、メキシコ、グァテマラ、コロンビア、エクアドル、チリ、アルゼンチン、ブラジルと十八カ国を回った。ブラジルでは、イグアスー市、クリチーバ市、サンパウロ市に立ち寄る。二〇〇三年四月下旬には、レジストロ市にいた。今後の予定は、再びブエノスアイレスに移動し、南アフリカへ移動。その後、アフリカ、ヨーロッパを巡り、最後にはインドのカルカッタを目指す。インド到着時には、七十から八十カ国を訪問する予定。
 伊原さんは、島根県出身。大学では教育を学び一時は教師を志す。しかし、何も知らない自分が教師になっていいのかと、悩む。今回の旅は、自分の進路を、自分のやりたいことを探すために出発を決意する。出発するまでの三年半は、新聞配達などをして毎日三,四時間睡眠で働く。出発前の写真と今を見比べると、今の顔が若々しく見える。
 旅を通じて多くの体験をする。サンパウロ市で、リベルダーデに一カ月滞在。多くの日系人に出会い、日本人にない彼らの人間味とパワーを知った。チリでは、一年間ルームメイトと同居しスペイン語を習得。行く先々で、バイクをきっかけにして仲良くなり、家に招待されることもあった。
「南米の人は、家族をものすごく大事にする。近年、日本では教育の荒廃が言われている。南米のこの考え方は、日本教育の手本になる」と、力説する。
 良い事ばかりではない。ブエノスアイレスでは、日中、二人の麻薬中毒者と思われるピストル強盗に出会い、所持金と衣服を盗られる。ボリビアでは、農業用水をめぐって農民デモがあり、道路が封鎖される。突破しようとした伊原さんは、農民にナイフを突きつけられる。
 「帰国後は、人とかかわる仕事がしたい」と、語る。十八カ国で、多くの価値観や出来事と出会った伊原さんの、日本での飛躍を期待したい。

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