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移民のふるさと巡り=3千キロの旅移=終=懐かしのノロエステ=リンスはいま出湯の里

10月16日(木)

 十月一日午前二時にホテルに入った一行は、最後の二日間をリンスの温泉地で過ごすことになった。
 リンスはサンパウロから四百四十五キロ。日本人が考える温泉とは異なっているが、これがブラジルの温泉と思えば違和感はない。
 ブラジルの温泉について書くと、ゴヤスのリオ・ケンチ、カルダス・ノーバス、ミナス州のアラシャー(鉱泉)などは自然に湧出したものだが、サンパウロ州のは、自然に湧出したものは無い。六〇年代に時のサンパウロ州知事のパウロ・マルフ氏が石油探査に、州内のあちらこちらを掘った際、石油は見つからず、掘ったところから熱い水が噴き出し、行楽地として脚光を浴びてきたわけである。
 昼食時、ホテル内の池で釣ってきたティラピアなどを刺し身にしてきたが、醤油はあるものの肝心なワサビやショウガが無い。フランス料理などで使う粉末のショウガの粉が無いかとボーイに聞くと持ってきた。それを降りかけるとかすかにショウガの味がした。
 昼食の後、またプールで楽しむ人もあり、四時半、リンス慈善文化体育協会(会長・安永和教)に向かう。ここで最後の交流会と法要を行う予定だった。出発時に電話が入り、法要を行うことに行き違いがあり用意ができてないという。「移民のふるさと巡り」が単に移住地訪問だけでなく、亡くなった先達の霊を慰めるということが旅の一つの目的で、多くの人たちに参加してもらっているので、主催者としては団員に申し訳がなかった。
 このノロエステ線は「移民のふるさと巡り」第一回の訪問地であり、その時はプロミッソン、カフェランジアまで来たが、リンスは訪問していなかった。
 会館では安永会長をはじめ多くの人たちが出迎えてくれた。週日でカラオケとカラオケダンスの人たちが中心らしい。カラオケが始まり、高橋団長を交えて安永会長にリンスの様子を聞く。
 文協会員は三百五十家族前後、ノロエステ文協連合会に加盟しているのは三十二文協あり、その本部はアラサツーバで、ノロエステ線で一番大きい会館を持っている。近くにプロミッソン、カフェランジアなど日本人にゆかりの多い地域。悲劇の平野植民地や上塚植民地も近い。
 安永会長は三世だが日本語はペラペラ。会長は、自らマイクを持って団員の一人ひとりに差し出す。団員の中にはリンスやカフェランジアなどノロエステ線で生まれた人も多く、誰々に世話になったとか語り、座が盛り上がった。夜も更け、最後に炭鉱節など会場で皆輪になって踊り、「ふるさと」を合唱しホテルに戻る。
 翌二日、ロビーに行くと、安永会長が父親の忠邦さん(八二)と一緒に来ていた。昨夜のお礼を言う。忠邦さんが和田周一郎さんの古くからの知り合いで、「移民のふるさと巡り」に参加している和田さんの長男の一男さん(七九)に渡したいものがあるという。
 忠邦さんが手渡したいというのは、開発青年隊の産みの親で建設技官だった長沢亮太氏が一九八〇年に明治神宮六十年祭の時、作った「菊の香やすめらみことの御声拝して」という額に入った色紙で、裏に和田周一郎氏へと書いてある。
 そこにいた小山徳氏は青年隊の隊員としてブラジルに来ただけに、懐かしそうに話の輪に入った。ちょうど通りかかった、この「ふるさと巡り」最年長者の河合五十一さん(九一)を紹介する。愛知県出身で元気一杯、毎朝縄跳びをするそうだ。旅行の話をすると、来年はギリシアのオリンピックに、二〇〇五年には出身地の愛知で万博があるので行くとか。「ふるさと巡り」の〃宝〃である。
 安永さん親子の見送りを受けて、バウルー経由サンパウロに向かう。六泊八日というバス三千キロの旅を、団員一同なんの事故もなく無事終えた。おわり。(伊東信比古さん通信)
 ※なおこの記事と団員からの感想文(投書)、カラーコピーなどを使った報告書が十一月に県連から出される予定。県連では投稿を待っている。

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