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移民住宅が日本の文化財に=レジストロの旧久保田邸=文化審議会が文科相に答申=70年代 愛知・明治村に移築

11月28日(金)

 ブラジル日本移民のコーヒー栽培農家が日本の文化財に――。日本の文化審議会(高階秀爾会長)は二十一日、帝国ホテル中央玄関など「博物館明治村」(愛知県犬山市内山)の建造物三十二件を文化財建造物として登録するよう、川村建夫文部科学相に答申した。「明治村」の建造物には、サンパウロ州レジストロ市から移築されたブラジル移民住宅も含まれており、日本の文化としてのブラジル移民の存在が認められたともいえそうだ。

 同住宅は木造二階建てで一九一九年、故・久保田安雄さんの住宅として建てられた。一九〇八年以来、ブラジルに渡った移民たちがサンパウロ周辺でコーヒー栽培に従事した歴史を物語っている。
 建物の造りをみると、遠い異境の地で慣れないコーヒー栽培に苦闘しながら、密林を拓いて現地産の材木を加工、日本人大工が和風の工法で建築。一方では、二階のベランダ、スペイン瓦をふいた屋根などは、土地の風土に合った素朴さが漂い、当時の移民が日本文化を守りつつ工夫を凝らして生活していたことがわかる。
 同住宅は、現在、「ブラジル館」として、二二年に開催されたブラジル博覧会と、初期移民の工具や移民船の模型などブラジル移民に関する資料が展示されている。海外からの移築建造物でブラジル移民住宅同様、文化財登録を受けるものに、シアトル日系福音教会、ハワイ移民集会所が挙げられている。
 ブラジル移民の歴史が刻まれた住宅が文化財登録されることで、レジストロ日伯文化協会の山村敏明会長も感無量の様子。「初期移民たちは、手弁当で集まり、『今日は、だれだれの家を造ろう、明日はだれだれの家』と協力しあって住宅を建てたらしい」と当時の様子を説明、「レジストロは開拓移民として永住目的で来た人が多い。その移民の住宅が日本で文化財になることは、レジストロのコロニアにとって、まことに光栄です」と喜びを語った。

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