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日系ブラジル人の音楽性研究=米国人女性、沖縄民謡に感動

12月6日(土)

 アメリカ・カリフォルニア州出身、ピッツバーグ大学博士課程で民族音楽学、ニューヨーク大学で表現学などを研究するシュシャーナ・ローレンツさん(三三)が、日系ブラジル人の音楽性について研究している。このほど、米国の奨学金を得て六ヵ月の日程でブラジル滞在、サンパウロ市のブラジル沖縄県人会ほか数ヶ所を訪問、現地の聞き取り調査を行った。
 シュシャーナさんが作成中の論文タイトルは、「日系ブラジル人のグルーヴ(音楽的ノリ)発見――ブラジル、サンパウロにおける日系ブラジル人の音楽性、世界観、アイデンティティー(仮題)」で、沖縄民謡を多く取り上げる予定。シュシャ―ナさんは研究材料として、世界中の民族音楽を集めていたが、沖縄民謡を聞いた時、複雑な表現を用いる発声法の美しさと独創性にいたく感動したという。
 ブラジル滞在中、バイア連邦大学の里見アリッセるみ教授らの指導を受けて、沖縄民謡研究を開始したシュシャ―ナさん。沖縄県系人で構成される琉球民謡楽団「トントンミー」の実態調査、琉球民謡保存会ブラジル支部の故・安慶名信夫元支部長、琉球民謡協会ブラジル支部の故・与名嶺清吉元支部長の両門下生からの聞き取りなどを行なった。
 英語、西語、葡語など多言語が堪能なシュシャ―ナさんだが、日本語や沖縄方言は未修得。トントンミーで使用される沖縄方言歌詞は保存会支部、山城パウロ日語書記が葡語翻訳した。
 シュシャ―ナさんは、また、沖縄県人会ジャバクアラ支部(崎間達雄支部長)で幸地朝市、親川パウロの両氏が指導する民謡教室を見学、沖縄を代表する民謡『安里屋ユンタ』などを聴いて、「本当のエネルギーを感じる」と称賛。そのほか、十一月七日、沖縄県人会で宮城調智会長、県人会理事でFATEC大学教授でもある崎間支部長ら沖縄関係者から民謡にまつわる話を聞いた。シュシャ―ナさんは、「沖縄はアメリカと切っても切れない関係がある」とし、「沖縄文化を色濃く継承しているのは、ブラジルにおいて他はない」と語っていた。
 シュシャーナさんは現在、アメリカに帰国している。民謡愛好家たちは、「県系でもない、米国人のシュシャーナさんのような存在は、私たちにとって、これ以上もなく光栄なこと」と喜びを語っている。

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