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70年前の「日伯陸上」調査=曽根さん、証言者らに感謝

1月14日(水)

 昨年九月、七十年前来伯した日本の大島謙吉選手ら陸上競技選手団六人の足跡を調査に来た曾根幹子・広島市立大学助教授から、新年、便りがあった。「サンパウロではお陰さまで多くの資料と情報を入手することができた」と書かれていた。
 サンパウロでは、松村昌和さん(レジストロ在住)、丸十賢一郎さん(サンパウロ、イビラプエラ陸上ベテラノ会)らが、曾根さんの質問に応えた。
 現在、健在だが、七十年前のことを〃証言〃できる人はほとんどいないのではないかと、当初曾根さんから依頼を受けたブラジル在住の関係者が語っていたが、意外にも、当時、十歳~十三歳くらいだった人たちの記憶はかなり鮮明だった。質問に答えることができたようだ。
 松村さんは、農業雑誌「農業のブラジル」に(七十年前の)日伯対抗陸上競技大会のことが掲載されていたこと、丸十さんは、着伯した選手団の動静、種目、記録、さらに大会が行われた競技場クルビ・アトレチコ・パウリスターノの一周が三〇〇メートルだったこと、を証言した。
 移民史料館の中山保巳・前副館長は「七十年前の記憶が日系社会に立派に存在していたことが証明された。これはわたしたちにとって非常な喜びであり、移民史の中の大きな発見であるといえる」と、『壮脚の友』第六十四号に書いている。
 証言した人たちは、曾根さんの「帰国後」を期待していた。例えば、出版物。しかし、曾根さんは帰国後多忙だった。今度の便りに「仕事に追われ、お礼の手紙が遅くなり――」と記されている。それでも資料、情報が入手できた、とわかったので、証言者たちには新たな楽しみができたことになる。
 既報のように、曾根さんは、七十年前来伯した選手団一行のなかの走り高跳びの選手、朝隈善郎さんの教え子。七二年、七三年度の全日本陸上競技女子走り高跳びの選手権保持者であった。七六年、モントリオール・オリンピックに出場した。昨年は、師・朝隈選手らと同じコースをたどり、ペルー、チリー、アルゼンチンを経由、九月十日、ブラジルに到着したものだった。この日は、クルビ・アトレチコ・パウリスターノ競技場で日伯対抗陸上が行われた日だったという。

 

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