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NGO文化教育連帯協会が講演会=デカセギ子弟犯罪歯止めかからず=検挙件数10年前比40倍=「言葉」「教育」に=親が無関心

2月27日(金)

  デカセギ子弟を支援するNGO団体、文化教育連帯協会(吉岡黎明会長)は十九日午後五時半からブラジル日本文化協会貴賓室で講演会を開催した。同協会は文協デカセギ問題特別委員会が作った独立法人で、子弟問題を専門に扱う。
 昨年後半にJICAの支援で日本のデカセギ子弟の調査をしてきた心理学者の中川郷子さん、デカセギ犯罪に詳しいサンパウロ総領事館警備班の大熊博文領事(愛知県警から出向)、在日ブラジル人学校を担当するブラジル教育省の国際関連役員ヴィトーリア・クレーヴェルさんらが順に話した。
 大熊領事は「日本において、少年犯罪が多発し、その手口も凶悪化の一途をたどっており、特に愛知県などのブラジル人集住地では、ブラジル人少年の犯罪の多発が問題になっております」と提起した。
 〇二年の犯罪統計によれば、来日外国人少年犯罪の大部分をブラジル人が占めている。十年前に比べて検挙件数で約四十倍、検挙人員で約二十倍に膨れ上がった。デカセギ者総数がその間一・八倍にしかなっていないのを考えれば、ブラジル人少年犯罪の激増は顕著だ。
 同領事によれば、犯罪に走るブラジル人少年の特徴は「ほとんどの者が職を転々としている」。日本語の日常会話は理解できるが、漢字、ひらがな、カタカナを書くことはほぼできない。日本の学校をすぐ辞めてしまった者が多いが、ブラジルにおいても学校中退などして教育水準が低い者が多い。
 犯行動機については、かつては言葉や習慣の違いから、学校や職場で日本人とうまくいかず、親は共働きで子どもの教育に頭が回らず、学校にも家にも居場所がなくなり、仲間同士で悪の道に走るという同情すべき理由が多かった。しかし、「現在では自動車や麻薬の購入資金を稼ぐためとか、ディスコで遊ぶ金欲しさなど、同情の余地のない動機が増えている」そう。
 最も多いのは窃盗で、中でも車上狙い、万引きが多く、酷いケースでは凶器を使ってコンビニエンスストアで強盗を働くものもいる。最近では覚醒剤や大麻等の薬物によって逮捕されるブラジル人少年が増加。「友人と雑談中に犯行を思い立ったら、すぐに実行するなどその実行方法についても非常に短絡的なものが多い反面、証拠隠滅のため盗みに入ったガソリンスタンドに火をつけるなど、凶悪な一面もあります」。
 大熊領事は最後に、愛知県警の通訳職員の経験談を引用。逮捕されたブラジル以外の外国人は犯罪目的で来日していることが多く、取り調べに対して嘘をつきまくるが、「ブラジル人は当初嘘をついても、話しているうちに心が通じ合えば、本当のことを話してくれることが多い。根っからの悪人ではないと思う。やはり、学校や職場における環境が、彼らを悪の道に走らせるのではないか。その一番の原因は、やはり言葉や、教育に関する親の無関心さだろう。それが改善されれば、ブラジル人少年犯罪もかなり減るのではと思われます」と結んだ。
 なお、同連帯協会は講演会に先立ち、五時から評議会を開催し、役員人事などを決めた。評議会会長は上原幸啓さん、副会長には大原毅さんが選任された。

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