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日本以外の外国に住むブラジル人の生活=インターナショナル・プレス紙から=(1)=ポルトガルは親戚だが必ずしも歓迎しない

4月3日(土)

 一九九一年、日本で創刊され、現在、葡語版六万部、西語版二・五万部の発行数を誇る週刊紙インターナショナル・プレス(村永卓也代表取締役)。愛知、静岡、群馬などデカセギ労働者が多く居住する地域に支局を置き、日本、ブラジルをはじめ世界の時事ニュース、デカセギの実態など在日ブラジル人らが抱える様々な問題を提起している。デカセギを中心に多数の支持を得ている同社がさきごろ、在外ブラジル人特集を組んだ。日本以外の海外に住むブラジル人の生活密着型の記事を、ニッケイ新聞でも翻訳、要約して報道することに決めた。

◆ラテン・ヨーロッパ◆

 ポルトガル、イタリア、スペインのラテン諸国に居住するブラジル人は計十八万人といわれている。ポルトガルだけでも九万人、さらに不法滞在者が約一万人も暮らしている。この三国に魅せられる第一の理由は、類似した文化、そして言語理解の容易さ。現地の言葉を流ちょうに話せなくても、多くのブラジル人は、「ポルトゥニョール(葡語混じり西語)」「ポルトゥラーノ(葡語混じり伊語)」で難を乗り切っている。
 三国のなかでも、ポルトガルは間違いなく最も近い親戚だ。しかし、それは、必ずしも移民を出した国の民が両手を広げてブラジル人を歓迎することを意味しない。
 「言葉は同じ。でも、国民性はまったく違う。ブラジル人は通常、開放的で楽天家だけど、ポルトガル人は慎重で内向的。ポルトガル人はブラジル人びいきという考えはもう過去の話。みんな、いつも同じことを聞かれるのよ。『どうして生まれ故郷に帰らないのか?』と…」。
 ポルトガルから帰国、ジョルナル・サビアーを発行するクリスチーナ・ポルテッラさん。ラテン・ヨーロッパに行くブラジル人の大半が下級階層の職に就き、現地の人から偏見の眼差しを向けられている。「ここポルトガルでは、ポルトガル人がやりたくない仕事を外国人にやらせている。専門職に就いているブラジル人もいるが、実際に一九九〇年代後半から始まった移住ブームは、建築や商業、飲食業界での職だった」と語る。

◆文化の壁◆

 不法就労者の一部は、ポルトガルとブラジル両政府間で昨年七月に交わされた同意書に救われた。この日以前にポルトガルに渡り、不法で働いていたブラジル人を合法化するものだ。
 在リスボン・ブラジル総領事館のセルジオ・パラッツォ氏によると、保守的なポルトガル社会がブラジル人を疎む問題は古くからあるが、それは両方の国民に責任があるという。「外国人排斥運動が存在するとはいえないが、現葡国政府の一部は、ポルトガル文化を保護するためとして、移民の縮小を主張している」。
 ポルトガルが最も恐れているのは、ブラジルのドラマや音楽、文学の流入で、ポルトガル特有の文化を失うことだ。パラッツォ氏は、「その上、私たちブラジル人は言語に不自由しない。その他の移民と違って、ブラジルにいた時と同じように生活し、つい、文化の違いを忘れてしまう。それがポルトガル人にショックを与え、嫌われる要素を作ってしまう」と分析する。
 十一歳でポルトガルに移住したオリーヴィア・フィゲイレッド・ダ・クーニャさん(三三)は、「ブラジル人のことを明るくて楽しいといって好むポルトガル人もいるが、労働市場を奪うからと毛嫌いする人もいる」と話す。オリーヴィアさんの父親はポルトガル人。サンパウロでランショネッテを営んでいたが、十回以上も強盗に遭った後、妻と三人の娘を連れて母国に戻った。
 ポルトガルはヨーロッパ共同体のなかで最も生活費が安い国だ。しかし、パラナ出身の既婚女性で、八歳の息子を持つA・P・B・Lさんは、「それでも生活費は高い」という。Aさんは二年前にポルトガルに移り、リスボンの漁業部品を生産する工場で、四人のブラジル人女性とともに針仕事に従事している。「金持ちになることはできない。でも、針仕事でもいくらかの貯金ができる。ブラジル人と違って、ポルトガル人はツケをしないから」。
(つづく)

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