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訪日団事業=補助金カットで廃止も=海外日系人協会「続けたい、決定はまだ」

5月27日(木)

 数々のドラマ産んだ訪日団が中止の危機に――。一九六七年に笠戸丸移民九人を招待したことに始まり、昨年までに七百人を超える一世移民に里帰りの機会を与えてきた「海外日系人訪日団」。移住してから半世紀間、一度も帰国していない移民を対象に、海外日系人協会が継続してきた事業だが、三十七回目を迎えた今年度で終了する可能性が高まっている。外務省の補助金打ち切りに伴うものだ。当時の皇太子ご夫妻のご謁見を受けたり、NHKに出演したりと日本でも大きな反響を呼んだ訪日団。コロニアでも継続を望む声は大きい。

 移住後五十年が経過し、一度も帰国していない一世を対象に、長年の苦労をねぎらおうと始まった訪日団。コロニアでは「初期移民招待」として知られているが、きっかけはブラジル日本都道府県人会連合会が企画した笠戸丸移民の招待だった。
 六六年に当時の中尾熊喜県連会長は、笠戸丸移民の生存者を日本に招いてもらおうと尽力。結果的には中尾会長が自費で、渡航費などを負担した。中尾会長は七二年まで六回の訪日団、計七十三人を送り出した。
 七三年の第七次からは、海外日系人協会が政府と交渉したこともあり、予算が認められ昨年までの三十六次までで計七百三十九人が夢にまで見た母国の大地を踏んでいる。
 特に笠戸丸移民を送り出した第一次は、日本国内にも大きな反響を呼んだ。
 六七年二月二十八日にサントス港を発った「ぶらじる丸」は横浜港に到着。日本での行程の三日目には、当時の福永健司官房長官が「神様のような顔ですね。皆さんに勲章を差し上げることになりました」と面談した一向に通達し、四月十八日に伝達されている。
 また、皇太子夫妻(現天皇皇后両陛下)と接見したり、NHKに生出演したりしたことで「笠戸丸移民」の存在が、大きく取り上げられるなど嬉しいハプニングも生まれている。
 生まれ故郷を一目見る絶好の場――郷愁に満ちた一世にとって、訪日団は貴重な機会だったが、日系人支援に対する政府の援助は年々削減される状況が続き、コロニアでも県費留学生の廃止問題などが話題となってきた。
 三十七次となる今年度の募集についても、窓口となる県連事務所前には「今年度で事業は終了」と書かれたポスターが張られ、今年限りでの廃止が濃厚だ。
 同協会によると、ここ数年日系人支援に対する援助は年に一〇%ずつ削減が続いていた状況で、外務省からは年間三千五百万円以下の零細補助金はカットする、との通達が出されているという。訪日団受け入れのために要する費用は、約六百万円だが、本来は昨年度限りで打ち切られていてもおかしくない状況だった。
 担当する西脇祐平業務部長代理は「私たちも対象者がいる限りは続けていきたいのだが」と話す。
 ただ、現段階では中止が決定したわけでなく西脇部長代理も「可能性はゼロではない」と強調する。
 十六年間県連で事務局長を務め、書類作成などに奔走してきた羽田武人さんは「大勢の方が心待ちにしていた訪日団だけに、中止になれば残念だ」と継続を望んでいる。
 すでに三十七次の募集を受け付けており、資格は次の通り。五十年以上一度も帰国していない▽渡航、滞日中の健康に問題ない▽渡航の経費負担能力に乏しい▽日本に受け入れ親族がいる――が条件となる。
 定員は二十人前後だが、要綱には「本年度で事業が終了することも勘案して応募には柔軟に対応する」とあるので、必ずしも条件にこだわる必要はない。
 問い合わせは県連(11・3277・8569)へまで。

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