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服ヨレヨレ□いい作品に□みんな真剣=「ハルとナツ」、移民も熱演

7月1日(木)

  NHKドラマ「ハルとナツ」のブラジル・ロケが連日行われている。公募のエキストラが多数参加。六月二十七日、カンピーナス・東山農場での撮影には、五月中旬のクランクイン以来最多となる百四十人が動員された。
 ある戦後移民は六月八日、二十七日の撮影へ出かけた。突然の電話で出演要請を受けた。
 「NHKですが、ハルとナツの撮影に参加していただけませんか」
 「はい、いつ?」
 撮影開始から一カ月、何の連絡もなく「今回は残念賞か」と思っていた矢先のことだった。
 女優の野際陽子さんが来ると聞き、「一度近くで顔を拝んでおきたい」と思ったのが動機だ。興奮した様子に娘は「くっだらない」と、口から唾を飛ばしていった。
 八日午前二時、文協駐車場前からロケバスで現場に向かった。まだ星が輝く時刻に到着。カフェをゆっくり取るまもなく、一九四〇年代の衣装に着替えさせられた。
 「日本人移民は清潔な服装で評判を集めた」はずが、実際の衣装は「着用済みのヨレヨレの下着。いい気持ちのものではない」。がっかりした。
 男性の年配者は、ほとんど髭をつける。女性の年配者は「こんもりとした髪形」。若い男性は髪を短くそろえられ、女性はほとんど髪を三つ編みにされた。「男女共にアッという間に古色騒然」となった。
 この日の撮影は、主役の家族がサントスから列車で植民地の駅まで行き、ファゼンデイロに引き渡されるシーン。「名簿をご確認下さい」と、ファゼンデイロに移民を引き渡す日本政府の役人を演じた。
 車中、主役の女の子が郷愁の念に襲われるシーンの撮影では何度も取り直しが。あまりに繰り返されるため、「かわいそう」と思った。
 「いくら俳優が上手に演じても、全てを捨てる決心をして、ブラジルに渡った移民の思いは表現できないと思う」とも。
 有名大学を卒業、安定した将来が保証されていたが一九六四年、二十三歳で移住。初めて就いた仕事を三カ月で解雇された。以来、苦労を重ねた経験からの言葉だ。
 広瀬秀雄さん(60)は二十四日の撮影に参加。
 この日は主人公の初恋相手がブラジル人女性と結婚するシーン。結婚式でバンド演奏するミュージシャンとして、クラリネットを演奏した。
 「楽譜見ながら演奏できると思っていたから、曲を覚えずに行ったら、『それじゃこまる』とブラジル人助監督に言われ、一時間で曲を覚えさせられたよ」と広瀬さんは笑う。
 曲は、当時流行っていたシロ・モンテーロ作曲の「ボトンエス・デ・ラランジェーラ」。
 「私が移住してきたころには、サンパウロもだいぶ開けていたけど、ちょっと離れたところの結婚式に行くとこの撮影現場と同じような風景が広がっていた」と、懐かしそうに語る。
 「納屋からもってきたような板の上にごちそうが並べられ、赤土がむきだし、新婦が池のほとりを歩いたもの」。ドラマも忠実に再現していた。
 広瀬さんは一九六七年、二十三歳のとき移住している。
 撮影スタッフの情熱が現場にはみなぎっており、「ドラマはいいものになるよ」と太鼓判。
 日本ブラジル交流協会(玉井義臣会長)の第二十四期研修生として、今年の四月に来伯した山本裕美子さんも二十七日の撮影に参加した。
 この日の撮影は過激な乱闘シーンも見られた、勝ち組負け組抗争。日本人会会長の「日本は戦争に負けた」の言葉に、主人公の父親らが激怒して、殴り合いの大乱闘となった。
 「みんな真剣に演技していて、コップは割れるし、机も倒れて、目をケガする人までいた」熱気ぶり。
 それを見て「きゃーっ」と〃演技〃で叫ぶはずが、その白熱ぶりに思わず自然と叫んでしまったそうだ。
 撮影後、「こんなシーンが本当にあったのだろうか」と思い、年輩の移民の人に尋ねると、「本当にこんな感じだった。当時は、この抗争が発展して殺し合いにまでなった」と聞かされた。「移民の苦労が伝わってきた」と山本さん。
 日本では、移民の歴史はほとんど教科書で扱われない。山本さんは、「ブラジルに興味があったから多少は知っていたけど、もっと知らなければならないと思うようになった」。
 撮影は来月の半ばまで続く予定。支援委員会関係者は「天候により撮影日程の変更が生じ、ロケ直前にならなければ必要なエキストラの数が分からない」としており、応募者でまだ連絡のない方にも出演のチャンスは十分ありそうだ。

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