11月4日(木)
パラグァイ共和国イグアスー(Yguazu)移住地にある日本語学校で、今年の五月から始まった「高等部」の授業(本紙・五月七日報道)が軌道に乗り始めている。一九六三年九月一日に開校して以来、小学と中学部だけだったが、今年一月に教員歴十六年の実績を持つ青森県出身の堤和子さん(旧姓・堀内)が校長に就任したのを機会に、学校を運営している日本人会(栄田祐司会長・福岡県)が高校レベルの教育を日本人学校に併合することを決定した。
高等部は一コース三年間で、毎週土曜日に授業を行っている。生徒数は二十三人で、全員が日系子弟である。「しっかりとした日本語を教える努力をしています。日本の大学に留学できるような学力を備えたい」と言う堤校長は、新コースが始まってほぼ半年を経過して、休む者もなく、生徒たちの意欲の盛り上がりに明るい展望を感じているようだ。
看護婦や公務員など、日本語の会話を希望する非日系の勤労者のための「成人コース」も快調で、夜間を利用した授業が行われている。さらには、日本語を常としない子供たちを対象にした「ラパーチョ・コース」もある。日系児童だけの授業、ラパーチョ・コース、両方の併合授業、成人コース、そして、高等部の教育を堤和子校長を含め十名の教員が一丸となって取り組んでいる。
教員の中には、日系社会青年ボランティアと天理教派遣者がいる。移住地で生まれ育った柊本由紀江さんと深見美奈さんが母校の教員として頑張っている。二人はラパーチョ・コースも担当している。イグアスー日本語学校の二〇〇四年四月現在の児童・生徒数は高等部を含め百六十三名。みんなが楽しみにしている行事の一つが学習発表会だ。
この発表会を楽しみに日本語学校に通う非日系子弟がいれば、それを期待しながら子供を入学させている非日系の親もいる。イグアスー市人口の一割にも満たない日系コロニアの存在価値の証でもあろう。
今年の学習発表会は十月二十三日、日本人会サロンで行われ、立見席が出るほどの大盛況(堤校長の電話)であった。中学一年生たちは岩手県釜石の郷土芸能・虎舞笛を演じた。二十二日には絵や書道などの展示会あり、移住地を来訪中の三村申吾・青森県知事が会場で児童たちを激励した。
このような行事を通して、日系の子供たちは、両親や祖父母の郷里に想像をめぐらし、日本語への理解を深めていくようだ。