ホーム | 日系社会ニュース | レオポルジーナ案=一時凍結し世論調査へ=上原氏、会見で明言

レオポルジーナ案=一時凍結し世論調査へ=上原氏、会見で明言

3月30日(水)

 ヴィラ・レオポルジーナ案はとりあえず、交渉をストップします――。上原幸啓氏は二十八日午後五時から、急遽記者会見を文協ビルで開いた。上原氏は文協会長を務めた二年間を振り返り、二十四日の理事会で文協に隣接する兵舎を買収する交渉計画が承認されたことを報告した。百周年行事で進められていたヴィラ・レオポルジーナの日伯総合センター構想を一時的に凍結させることも発表した。
 会見には吉岡黎明、伝田英二、松尾治文協副会長、中島剛事務局長、渡部和夫百周年祭典協会補佐が同席した。
 上原氏は、日系社会で文協の将来を心配する声が多いことを挙げ、「文協はこの場所から動くことは、今も将来もありません」と力強く明言。
 創立五十周年を迎える今年、文協ビルの改装や大講堂に空調設備を導入するなどの案を検討中だと説明した。
 野村丈吾下議が提案している文協隣の兵舎買収について、「実は二年前から接触はあった」と伝田副会長は経緯を説明。
 「(買収にかかわる)エキッペを設置することや、文協として交渉を始める」ことが二十四日開かれた理事会で承認されたことが報告された。
 十三日に行われ、一万人を動員した文化祭りや、ドミンゴコンサートなどの盛況ぶりを挙げ、「現在の文協ビルはスペース的に限界」と認識したという。
この件の関して、理事会にかけると共に、百周年祭典協会の小原彰総務委員長(陸軍退役少将)とも話を進める考えを示した。
 上原氏は、文協会長としての二年の任期を振り返り、透明性を重視してきたことを強調したうえで、「経営バランスを安定させることができた」と一昨年まで赤字だった経営状態を好転させたことを評価。
 その理由として、企業の援助や四十九人いた職員を三十六人に削減するなどのリストラの断行、支出削減、駐車場収入の増加など、会計担当の伝田副会長が説明。具体的な数字は来月十六日に開かれる総会の場で発表すると話した。
 続いて、上原氏は文協の目的として、日伯間の文化交流に尽力することを確認。日系社会担当の松尾副会長は、全伯の日系団体と交流を深めながら、関係を強化したことにより、百周年祭典協会には三十三人の副理事長が参加していることを強調した。
 日伯総合センター構想について、「総会でヴィラ・レオポルジーナの交渉を続けることは決議されたが、様々な方面からの意見から、交渉をストップしたほういいのでは」という結論に達したことも明らかにした。
 同構想に関しての世論調査を専門会社に委託する考えがあることを明らかにしつつ、地域や対象地、期限や予算など具体的な内容は現在検討中、と明言を避けた。来月三十日に開かれる祭典協会の総会で議題に挙げるという。
 来月十六日に控えている文協会長選に関して、現執行部は文協会員に「団結と努力及び日本伝統の大衆化と価値付けの足取りをたどる文協」というこの二年間の文協の歩みをまとめたものを二十八日に送付したと報告した。
 ◇記者の眼◇
チグハグ、一貫性なし=祭典協会、統率力に欠け 
 やはり、どこかずれている――。上原幸啓氏の記者会見を聞いて、そんな思いがよぎった。
 文協会長として、横の軍兵舎買収のためのネゴシオを始める。百周年祭典協会理事長として日伯総合センター案を一時凍結して、ヴィラ・レオポルジーナでいいかどうか専門の調査会社にコロニアの意識調査を依頼するという。
 素直に、野村丈吾元下議の助言に従うことはできないらしい。ヴィラ・レオポルジーナ案を諦め、代わりに文協横を買収してリベルダーデにそれを建て、上原体制を百周年まで続かせるという野村提案。それを、文協と百周年という立場を器用に使い分け、自分たちの意図に合う形でチグハグに、中途半端に受け入れたという印象を免れない。
 どうしてこのタイミングで発表したのか。
 確かに兵舎の件は、伝田副会長らが言う通り、十数年前からの懸案事項だ。だがなぜ、野村元下議の提案が話し合われる三十日の高等審議会前というタイミングで、突然動き出したのか。
 しかも、ヴィラ・レオポルジーナ案の一時凍結に関しては、総会どころか理事会にすら諮(はか)らずに記者発表した。誰がどう見ても極めて重要な決定だ。
 百周年祭典協会をリードする役割を自認する文協自身が、かつて二百万レアルとも見積もられた横の兵舎を買う交渉を正式に始めることは、日伯総合センター建設にコロニアの勢力を集中させる方向とはまったく逆のものではないか。この一貫性のなさ、自ら股裂き状況を演出する意図は、どこにあるのか。
 文協役員選挙とは関係ない、という子供だましは通じない。それに一体誰が、百周年祭典協会を牛耳っているのか?
 本紙記者が十二日の説明会の後に取材した時、文協会長が代われば自動的に百周年理事長も新しい人に代わる、そう上原百周年理事長自身が説明した。百周年理事長の任期(三年間)の残りの一年は、自動的に新しい人になるとの見解を発表した。
 記者会見中、渡部和夫補佐はそれに異議を唱え「常識的には、文協会長が変わった場合は、百周年祭典協会の総会で理事たちはもう一度選び直す権利があるはず」と独自の主張した。
 結局、定款を読み直して再検討することが必要と、結論は持ち越された。
 また、意識調査はヴィラ・レオポルジーナの場所の是非を問うのであって、万一、反対意見が多い時でも、代替地で日伯総合センター案は継続される。その場合、記念事業として選ばれた他三案が繰り上げられることはない、などの重要な解釈を、その人物は披露した。
 内部的にも「協会に影響を与え続けるのなら、責任ある立場に着くべき」という声を聞く。これからも、責任を追求されないポジションから、事態の根本を左右する言動を重ねるのか。
 県連や商議所が協力的にでない事態をどう解決のするのかとの質問に、県連会長は総会の時はヴィラ・レオポルジーナに賛成したのに今になって意見を変えるのはおかしいとか、もっと理事会の中で議論をすべきとか、の意見に終始した。
 もちろん、理事会や総会に出席すらしていない商議所のあり方がいい訳はない。だが、なぜそうなのかを話し合い、引っ張り出すのも祭典協会のリーダーシップではないか。相手が悪いと言い続けても事態は改善されない。
 だいたい、日系社会の民意を図れるような調査会社があるのか。学者先生たちの発想で、総意がまとまるのはいつの日か。上原文協会長は「デバッチは嫌いだ」と、選挙前の公開討論会を自ら否定した。
 祭典協会の言い分に一理も二理もあるのは確かだが、問題は周りがそれでまとまるか、だ。今のようにコロニアをバラバラにさせる方向性を改める、本当の意味での歩み寄りが求められている。     (深)

image_print