ホーム | 日系社会ニュース | 神奈川県人会=高世会長を刑事告訴へ=独断で会館売却の背任=今年40周年、会員困惑

神奈川県人会=高世会長を刑事告訴へ=独断で会館売却の背任=今年40周年、会員困惑

4月21日(木)

 神奈川県人会は十七日午前十一時から臨時総会を開き、県人会館を独断で売却した高世整一会長を除名処分し、背任行為と公文書偽造の罪で刑事告訴に踏み切ると決議した。高世会長は昨年、議事録の文書に「会長の一存で会館を売却できる」の一文を入れるよう矢野久会計士に指示、会員の憩いの場である会館を勝手に売り払っていた。今年創立四十周年を迎える県人会には、母県から式典や訪伯団などについての問い合わせがきており、関係者は困惑の色を隠せない。新会長の選出は来月十五日の定期総会で行われる。
 「会長のことを今まで信頼していた。完全に騙された」。石原吉三会計理事は、苦渋の表情で訴えた。十七日の臨時総会には約三十人の役員、会員が出席。事態の理解と今後の打開策に頭を悩ませた。
 県人会館はヴィラ・マダレーナ区の閑静な住宅街にあり、会員の憩いの場として愛されてきた。県人会を守るべき立場の会長が、母県や先人たちの協力で完成した会館を独断で売却するといった暴挙が何故起きてしまったのかー―。
     ■
 神奈川県人会は昨年九月の臨時総会で、「会館の維持は困難」として売却を決定。その後入札した三社の条件を検討していた最中の昨年十二月末、県人会名義の銀行口座に三万レアルが振りこまれていたことから問題は表面化した。
 高世会長は「一月十八日の新年会で説明するので、それまで口外しないよう」と石原会計理事に伝えるなど事実の隠蔽を工作したが、この時点で、会館はLOHN&GOLDBERG不動産会社に売却され、一月三十日には名義変更もされていた。
 その後、総会の議事録(ポ語)に署名前にはなかった「会長の一存で売却できる」との条項が入っていると二人の副会長が指摘。それを受け、矢野久公認会計士が、「高世さんに頼まれてやったが、まさかこんなことをするとは」と書類手続きを行なったことを認めた。
 同不動産会社への売却額は、昨年末に応札した三社のなかで一番条件が悪く、市の査定額より低い九十五万レアルだった。そのため、「会長と何かネゴシオがあったのでは」という疑問の声も上がっている。
 県人会側の弁護士は「民事では難しいが、刑事裁判で争えば、勝てる見込みはある」とし、現在訴訟の手続きを行っているという。
 会の銀行口座には既に手付金として、昨年末の三万レアルを含めた十万レアルが振り込まれているが、今回の弁護士費用や書類翻訳などに使い、現在、口座残額は五万レアルに満たない状態だ。
 契約破棄するにあたり、十万レアルの手付金返済の捻出に、県人会が所有する牧場を抵当に入れる提案が出されたが、書類上の関係で難しいという。
 石原理事は、会員一人当たり千レアルを入金し、勝訴後、適正価格で売却した際に返却することを提案。会長が操作できないよう新たに口座を開設することも話し合われたが、話し合いは紛糾、五月十五日の定期総会で再度検討する。
 今回の契約を無効にすべく奔走する役員に対し、高世会長は「二十五万レアル払えば、自分が解約してもいいが、それにかかる費用は県人会で払ってほしい」「今月末までに引き渡してほしい」などと無責任な発言を繰り返している。
 県人会関係者によれば、高世会長は自宅などの不動産を家族名義に変更しており、損害賠償は難しいと見られるが、会員からは「カデイアに入ってもらう」との怒りの声も聞こえた。
 今年四十周年を迎える同県人会には現在、母県から式典や訪伯団の問い合わせがきており、役員たちは頭を抱えている。

image_print