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外交に温度差「協定なし」=日本=交渉は慎重に=ブラジル=現実的成果を=大統領訪日

5月14日(土)

 出発まで二週間をきったルーラ大統領訪日に関して、現実的な政治的成果を求めるブラジル側と、慎重に交渉を進めたい日本側とで、微妙な温度差が生まれているようだ。
 二十六日午後に韓国から東京入りするルーラ大統領は、夕方に小泉首相と首脳会談をし、共同声明を出す予定。二十七日には朝から経団連一行や日伯議員連盟代表らと会合するほか、昼に天皇陛下に謁見して昼食会に招待される。午後にはブラジル大使館主催の経済セミナーで講演する。翌二十八日は名古屋に移動し、地元のブラジル人コミュニティー代表者と懇談したり、各地を視察する。この日程はまだ調整中で変わる可能性がある。
 十三日午前、ブラジル外務省アジア太平洋局の藤田エジムンド局長はニッケイ新聞の電話取材に答え、今回のルーラ大統領訪日に関して、「日本の外務省は何のドキュメントにもサインしたくないようだ。首脳会談で、大統領はいろいろな案件について話し合い、いろいろなデクララソン(宣言や表明)はあるだろうが、アコルド(協定や取り決め)はただの一つもない」と回答した。
 藤田局長は、今回の大統領訪日期間中に発表されると推測されていた、新しい在日ブラジル総領事館設置の件について、「私は政治案件が担当であり、この件は在日ブラジル人コミュニティー課が担当。自分の領分ではないが」としながらも、「今回の予定には入っていない。何の発表もないだろう」と語った。
 注目されるエタノールや牛肉交渉に関して「デクララソンはあるだろうが、アコルドはない」とした。
 二十七日に予定されている経団連主催の経済合同委員会や、ブラジル大使館主催の経済・通商イベントでは、たくさんの民間企業代表者が話し合うことになる。「民間企業同士のではおおくのプロジェクトに関して契約が交わされるだろうが、政府ベースでのアコルドは一つもない。日本側が求めていない」と繰り返した。
 これに対し、ブラジリア日本国大使館の大竹茂公使は、「来週にかけて最終的な詰めが行われるでしょうが、かなりの数の、いろんな分野に渡っての協力関係を進めるような文章が用意されています。将来に向けて前向きな表現が出てくるのではと思います」と語り、日本側の前向きな姿勢を強調した。二十六日夕方に行われる小泉首相との首脳会談のあと、共同声明が発表される予定。
 金額や具体的な数字など、分かりやすい訪日の政治的成果はないかもしれないが、日本のブラジル人子弟の教育問題や年金などの社会保障問題にも触れ、経済交流活性化への本格的な検討を開始するような、両国の今後を占う重要な声明が行われる可能性を示唆した。
 堀村隆彦大使は十二日晩にブラジリア大学で講演し、「将来的に経済連携協定(EPA)を結ぶことを目指して模索することは可能かもしれない」と語った。日本はエタノールのような新しいエネルギーを求めているとの方向性を示し、「京都プロトコールでリーダーシップを発揮した国として、エタノールの導入は、国内の全てのエネルギー政策に影響を与えることになるだろう」と講演した。価格や供給安定性など経済的諸側面が今後検討されるだろう、との考えを表明した。
 同様に、日本とブラジルは平和な社会の構築、貧困の根絶、相互自由貿易に関する世界貿易機関(WTO)の関係強化などの分野で協働できるとの認識を明らかにした。

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