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韓国1世の声=多く残したい=奈良県の研究者=全淑美さん

7月8日(金)

 日本政府の移住政策で戦前日本から来伯した移住者の中に、韓国名で出入国していた朝鮮半島出身者がいたことがこのほど、「日帝時代」の韓国人ブラジル移民について当地で調査を進めている奈良県の研究者で韓国人三世、全淑美(チョン・スンミ)さんの調べで明らかになった。
 神戸移住教養所に保管されている資料に、十三人の同半島出身が記載されていたことから、サンパウロ市モッカ区の移民史料館(旧移民収容所)で入国記録をつぶさに当ってみたところ、うち七人の存在が韓国名で確認できた。
 移住が国策である以上、出入国時には同半島出身者であっても日本名を名乗っていたはずとの認識がこれまでは根強かった。埋もれていた事実に光が当ったことについて、全さんは「残りの六人を発見できなかったが、こうした例外があったことは、韓国人ブラジル移民史において貴重ではないか」と話している。
 一九五六年奈良県大和郡山市生まれ。父(82)は九歳で来日し、母(73)は岡山県出身の二世だ。筑波大学大学院を卒業し小・中・高の教員免許を取得。大阪府の小学校などで勤務後、台湾や韓国で日本語教師を経験。最近までは福井大学の留学センターで働いていた。そこで知り合った日系ブラジル人の男子学生から「自分の曽祖父は韓国人」と聞いたことが、調査を始めたきっかけだった。
 今年は、日本が韓国の外交権を握った日韓協約が結ばれて百年。「在日韓国人社会では一九一〇年の日韓併合より重視される」(全さん)節目の年でもある。
 「一世の方々の声を出来るだけ多く後世に残したい」
 ブラジル滞在は残り一カ月。韓国系コロニアの基礎を築いた移住者に関しての論文を仕上げる目的を果たすため、聞き取り調査を続ける毎日だ。

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