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コラム 樹海

 ブラジル日本文化協会が「水曜シネマ」を始めた。外部からいい企画をもらったものだ。持ち込まれた企画をすんなり受け入れる柔軟性が、文協にまだあった。映画が大好きなお年寄りには朗報である。母もので知られる三益愛子・川口浩親子が共演する五七年の作品「くちづけ」などは、映画の〃なつメロ〃版である▼サンパウロ市から日本映画上映専門館がなくなってから二十数年。当時はちょうど、大衆娯楽が多様化したころだったので、さほど消滅が「ショック視」されなかったものの、ファンにとっては、さびしい限りだった。いまファンは老いたが、「日本映画」を大きな「館」で観たい気持ちは変わっていないと思われる▼聞けば、DVDを用いた映像は大型でも鮮明だという。マニアにも満足がいくほど、画面に疎漏がみられないそうだ▼文協大講堂の「遊休」を解消する策にもなった。使用すればあとの清掃がたいへんだ、などは言わず、この際、特に高齢者のためにサービス精神を発揮すべきだ。執行部は口をひらけば「お年寄りに喜ばれる事業を」と言ってきた、その実行だ▼会員が無料で、非会員が安価な二レアルというのもいい設定である。「水曜シネマ」が、いい意味での会員、非会員の差別化となり、新会員入会の呼び水になれば幸いだ▼「若いころ十分に働いたから、もうプラッサでのんびり過ごしたい」といっている、あのリベルダーデ駅前の高齢者たちを文協講堂に〃吸引〃できるか、興味がある。(神)

05/08/05

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