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日本人とは問うドラマ=「ハルとナツ」=東京で試写会と会見

2005年8月25日(木)

 【東京支社】NHK放送八十周年記念大型ドラマ「ハルとナツ―届かなかった手紙」が十月二日から五夜連続放送されることが決定したことを受け、二十三日午後NHK放送センターで、同ドラマの第一回「姉妹」の試写会が開かれ、その後、脚本家橋田寿子さん、ハル役の森光子さんと米倉涼子さんが会見。多くの記者とカメラマンがつめかけた。
 大型スクーリンに映像が映されると、胸に染み入るテーマ音楽が流れ、ナレーションでブラジル日本人の歴史が語られ始めたドラマ。妹のハルを七十年ぶりに孫の大和(今井翼)と訪ねる高倉ハル(森光子)の場面から始まる。
 第一回は九十分。第二回から五回まではそれぞれ七十五分。このドラマが重厚なものであることは、第一話で十分うかがえた。
 会見で制作統括の阿倍康彦氏は「挨拶のなかで、準備から完成まで丸三年。このドラマを全国の人びとに見てもらいたい」とした上で、「きわめてシンプルのドラマ。だが、橋田先生がいろんな形で家族、孤独などいろいろなテーマをおさめられ、非常に懐が深く、深みのあるドラマに迫っている。関わった全ての人が力をこめ、この作品が出来上がった」と語った。
 脚本を書いた橋田さんは「膨大な資料を読まされました。脚本を書くのに半年かかったが、資料を読むのにも三カ月ぐらい。でも、作品を見て、今度ばかりは、やっぱり演出だなーと思った。演出と俳優さんとスタッフの意気込みで作品がこんなにもなるものか、本当に感動した。ブラジルを書かせていただき、とてもよかったと思っています」と明かした。
 八十歳のハルを演じた森光子さんは「こんなご本 (脚本)が五冊で。でも、私も久しぶりに大きなお仕事をさせていただいという気持ち」
 森さんはブラジル移民七十周年に取材者としてブラジルを訪ねている。
 「そのとき一世の人たちと歌ったり語りあったりした。まるでこのドラマのために、ブラジルにいったのではと思う」。
 米倉涼子さんは十六歳から五十五歳までのハルを演じる。
「初めての橋田先生の脚本で演技をさせていただき、また私の憧れの大女優の森さんと、同じ人物ハルを演じることができ、こんな幸せことはありません」
 大変だったのは、大きなダニをさけることぐらいだった、という。
 記者の質問に答えた橋田さん言葉は重かった。
「私は日本人だということにすごくじくじたるものがある。今の日本はちょっと自慢できません。本当に日本を愛し、外国だから日本人はしっかり生きていかなければ、というあの精神を日本人にもってもらいたい。そんな思いもこめて書きました。豊かさで失った幸せ、そういうものを書きたかった」
 このドラマは、今の日本人に大きな問いかけをすることは確かである。

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