ホーム | 日系社会ニュース | シンポジウム、興味深い視点から報告=デカセギ子弟=最新の教育事情=「異文化に優劣つけるな」=――ニウタ・ドス・サントスさん=「今、イミグランテの時代」=――アンジェロ・イシさん

シンポジウム、興味深い視点から報告=デカセギ子弟=最新の教育事情=「異文化に優劣つけるな」=――ニウタ・ドス・サントスさん=「今、イミグランテの時代」=――アンジェロ・イシさん

2005年9月10日(土)

 サンタクルース日伯慈善協会(横田パウロ理事長)主催の「日本のブラジル人子弟の教育」講演会が二日午後、サンパウロ市内のUNIFAI大学で行われた。武蔵大学社会学部のアンジェロ・イシ専任さんら三人が講演し、約百人が最新の教育事情に耳を傾けた。
 最初に発表したのは、在日六年にして日語を流暢にあやつる非日系の才媛ニウタ・ドス・サントスさん。ミナス州都ベロ・オリゾンテ出身で、現在は群馬県太田市で日本語指導助手として働く。
 まず、「事情は学校によって異なり、自分の話は一般化はできない」と断った上で、母国語が満足に使えない外国人子弟が増えていると警告を鳴らす。
 「父はブラジル人、母はフィリピン人の子どもは一見、三カ国語をしゃべっているように見える。でも、実はどの言語でも思春期の葛藤を充分に表現しきれず、結局はミックスしてしゃべる子がいる。かといって日本語で表現しても親が理解できない・・・」
 家族内の意志疎通がむずかしいことが、子弟の不良化の一因になっていると指摘した。「もちろん、ブラジルの初期移民にも同じことが起きたでしょう」とも。
 「中には、日本の公立校ですごい成績をあげている素晴らしい子弟もいます。家族の理解と協力がなによりも大事。もっと子どもの教育に関心を持ってほしい」と訴えた。
 コミュニティの中では「自国文化が一番」という意識を持ち易いとし、「どれが一番とか優劣をつけるのでなく、各国のそれを〃違い〃として認識する啓蒙活動が必要」とした。
 さらに「日本人教師は熱意を持ってがんばっている。誰にも不慣れなことや間違いはある。でも力を合わせて改善しましょう」と締め括り、会場からは大きな拍手がわいた。
 日系三世の武蔵大学のイシ講師は、「私は在日ブラジル人一世です」と自己紹介。「多くの日本人研究者はリベルダーデには行ったことあるが、大泉(日本のブラジル人街)は知らない」と、ジャーナリスト出身らしく皮肉から話し始めた。「日本の学界では外国人子弟の教育問題が〃流行〃しており、研究費を申請するならこれしかない」との会話も聞いたことがあるという。
 あまりにも多くの関心が集まっているため、なんでもかんでも教育のせいにする風潮まであるとも。「例えば、親が仕事を変えたために転校し勉強についていけなかった問題などは、教育というより労働問題など別の側面が強い。全体をみて論じる必要がある」。
 デカセギ時代は終焉に向かい「イミグランテ(移住者)の時代」という人もおり、その意味で「自分は一世だ」と論じる。大泉や小牧には「移民記念館」ができ、多くの実業家が生まれ、アジアや沖縄のリゾートで休暇を過ごすものもいる。「バリ島で民宿を経営する人もいる」と会場を驚かした。
 現在、日本で永住ビザを取得するブラジル人は九〇六二人(〇〇年)▼二万〇二二七人(〇一年)▼三万一二〇三人(〇二年)▼四万一七七一人(〇三人)と激増している。
 この定住化傾向に関しても独自の視点を展開。「ブラジル人は日本とナモーラ(恋愛)していると日本人は思っているが、ブラジル人本人はフィカンド(仲良く一緒にいる)だと思いたがっている」と例えた。
 前回に続いて、東京でブラジル人支援をするNPO団体「CB・SABJA」の毛利よし子シスターも演壇に立ち活動内容を報告した。会場には日伯二十一世紀協議会の日本側メンバー、堀坂浩太郎教授(上智大学外国語学部)の姿もあった。

image_print