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コラム 樹海

 訪日して、高校生世代前後の女性たちの日常的な行動を垣間見て少し驚いた▼一つは、昔が失われていないと思ったこと。駅のみやげもの屋やスーパーの店員が、釣銭を受け取るのを忘れた客を小走りで追い、渡していた。これは、店員の美質でなく、経営者による接客指示なのかとも考えた。が、それでもすばらしい。ブラジルではまず絶対といっていいほどあり得ないことなので、感心した。店員が自発的にやっていることだと信じた▼もう一つは、電車に駆け込んで来て、座ると即座にケータイを取り出すか、小さな手鏡を覗きこみ、メイクを念入りにやり直す姿。両方やる者もいる。短い時間ではない。ケータイのぞきとメイクのあとはたいてい眠る▼六十余年前の戦時、焼夷弾の下を逃げ惑った中高年世代女性に質してみた。「ああいう女の子たちは、将来どうなるのでしょう」。答えはなく、首を左右に振るのみだった▼風潮、流行といったものは、時代とともに変わる。ただ、同じ年頃の女の子たちが、例外が少ない行動をし、結果、同じような顔がつくり出されるのは、驚きである。日本が豊かさを得たのちの、ある一面かもしれない。親たちが、女子高校生にそういう日常をしてもいい物的な余裕を与えたのであろう▼ブラジルの同世代の女性の行動様式といったものにそんなに詳しくはないが、顔をつくったり、着衣に強い関心を持ったりしているのはよくわかる。しかし、没個性にならないことだけは、はっきり差異がある。(神)

 05/11/4

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